私の好きな詩・言葉(148) 「庭」 (新井 豊美)
2012年 01月 30日
庭
そこで人々は耳をひらき
廃れていく時の培養基
褐色した印画紙の
(紙の中をながれる風の音)
時の⦅息⦆に聴きいっていた
ゆくために
必要なものはなにもない
(手ぶらを)
(見えているそのままの姿を)
(奪い取って)
そしていつのまにか
写真のなかの最後の一人となった子供だけが
見知らぬ星の形見として地上に残される
(かなしいとすればそのことだ)
沈黙に人々が与えたたくさんのうつくしい呼び名
(廃家の)、(廃庭の)、(廃市の)
(閉じられた手箱の・・・・・)、(思い出の・・・・・・)
言葉
失われた数々の季節をよみがえらせるために
水底の凍った泥をかきまわす春の魚
そのちいさなあかい胸鰭
芽吹くはしばみの枝を折って池の中にさしこむと
ふくらむ水の腹を枝はつらぬき
あざやかに溶け入る血
流れおりる枝先からさみどりの水滴にふくらんで
滴の音が
耳の濁りをいっとき
透明にする
(現代詩手帖1月号掲載)
ひと言
# by hannah5 | 2012-01-30 01:49 | 私の好きな詩・言葉 | Trackback | Comments(0)














