私の好きな詩・言葉(130) 「踏切」 (西原 正)   


踏切


朝は遺跡、踏切こそ
繰り返し踏み固められた重さに
時間が破れている
静かな二筋の鉄の板、日々は
落ちてこない空とレイルの間の
いちまいの版画
削られる時間は赤い鉄粉に染まり、人の
眼を鎮めては立ち尽くさせて、鳥が
いちばんに切る、踏切の朝
緑の滴が落ちて鉄の眼が開いた


(西原正作品集 『音函』 所収)





ひと言

静かな追っかけを開始している。
こう書くとよくわからないかもしれないが、触手を伸ばして、伸ばした先で触れた作品にびりびりきたり、さらに芯の方でぐわんぐわんと揺れたら、同じ作者の他の作品にも触手を伸ばしてみるというもの。西原正さんの作品はそうして出会った。西原さんご自身で作られたという 『音函(おとはこ)』 には詩や小説の美しい作品が収められている。その中から「踏切」という作品をお借りした。

早朝の踏切。二本のレールが静かに延びている。人気のない朝の踏切を一羽の鳥が横切る。静と動の見事な対比が作品に緊張感を与えている。しかし、作品はそこだけでは終わらない。静の中にレールが紡いできた歴史があり、歴史の中に個々の人間の生活がある。鳥の動きは一見動のように見えて、シャッターで切り取った一枚の写真のように瞬間の動きは永遠に静止したままだ。一日が始まる前の静かな朝の一瞬に、作者のさまざまな思いがよみがえってくるようだ。


                     *************


長さの関係からここではご紹介することができませんが、『音函』 に収められた「温かい雨」という作品(小説)にしみじみとした思いをもちました。心に沁みるような作品です。

西原さんは他にも 『光函』 と 『街函』 という作品集を作られています。

作品集を注文される方は西原さんのHPに書かれているメールアドレスから申し込みます。美しい作品をぜひ手にとってごらんください。



西原 正 (にしはら ただし)

1954年生まれ。
京都市在住。
西原さんのHP: 西原正Website
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by hannah5 | 2009-03-05 16:38 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(2)

Commented by 西原正 at 2009-03-05 22:31 x
ご紹介していただきありがとうございます。

感想もいただけて、とても嬉しいです。
「光函」「街函」も是非、お読み下さい。

今後とも宜しくお願いいたします。


Commented by hannah5 at 2009-03-05 23:19
♯西原正様
こちらまでご訪問くださり、ありがとうございます。
『光函』と『街函』も楽しみにお待ちしています。
こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。

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