私の好きな詩・言葉(132) 「詩を書くということ」 (ヴォイスラブ・カラノヴィッチ)   


詩を書くということ


これからの詩の言葉は
林檎の皮に書こう
紅や金の詩の言葉を
先の尖ったひと筋の光で
果物のつややかな皮膚をすべり
甘く瑞々しい言葉を繋げよう

鉛筆はいらない 鋭いナイフも
紙の白い皮も
意味のむこうの梢に
さしのべる手もいらない
もぎたての果物を
しっかりつかむ指も

空気の見えない肌に
詩をつくろう 羽毛のような
産毛が 光にさわって震える
詩の言葉で
美しい林檎を書こう
手のひらの この詩のような


(原題 ‘O pisanju poezje’)
(詩集 『躍る光 (Svetlost u naletu)』 より 山崎佳代子訳)







他1篇


天使


天使、それはとても小さな生きもの
けし粒のなかで
眠れそうなほど

    どうして
    けしの実がふわふわの
ねどこになるの

なるとも、天使はとても静か
飛んでいるのに君が
気がつかないほど

    どうしてあんなに小さな
なんでもない粒で
天使は眠れるの

君には天使が見えない 天使は白い
さらさらちぎれてゆく
雲のように

    天使がねころぶと
    黒い粒は
きゅうくつじゃないの

天使はからだがない その翼を
織りあげたのは
君の吐く息


(原題 ‘Andeo’) (詩集 『大地の息子 (Sin zemlje)』 より))


ひと言


びーぐる第3号は海外現代詩の特集だった。ルーマニア、トルコ、リトアニア、セルビア、ポーランド、ポルトガル、イスラエル、アイルランド、イギリス、ベルギーなどの詩人たちの作品が紹介されている。その中に私の心がふっと自由になるような詩があった。ほそい金の糸のような優しくて繊細なタッチのうつくしい詩。こんな詩が書きたいと思った。

ヴォイスラブ・カラノヴィッチ。初めて聞く名前だ。けれど、英語の略歴を見ると、詩人としてずいぶん活躍されているようで、大きな賞も受賞されている。詩だけではなく、詩誌の編集、ラジオドラマ、エッセイも書かれるというマルチな才能の持ち主でいらっしゃるようだ。

英訳された作品が7篇ある。いつの日か詩集の日本語訳が出るといいなと思う。



Vojislav Karanovic (ヴォイスラブ・カラノヴィッチ)

セルビア現代詩を代表する詩人の一人。
1961年、スボティツァに生まれる。
詩集 『キーボード』 (1986)、『大地の息子』 (2000)、『躍る光』 (2003)、『僕たちの空』 (2007)。
ヴィタル賞、ポーパ賞などを受賞
                            (びーぐる第3号よりコピー抜粋)
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by hannah5 | 2009-05-04 23:48 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(0)

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