わたしを拾う   


永遠に
コーヒーを飲んでいる気がする

金曜の夜

ひたすらわたしを振り切って
走って行く時間の後から
息を切らしながら
なんとか追いついた夜は
コーヒーはいくら飲んでも
水のように体の中に落ちていく

人々のお喋りが
さざ波のように漂っている空間で
背中を向けて坐っている人々の片隅に
こっそり坐る

スーツ姿のビジネスマンが
携帯を見つめながら
フライドポテトを一本づつ
口に運んでいる
そのすぐ前を
携帯を耳に当てた男の子が
無表情で通り過ぎる
ぶつぶつ独り言を言いながら
ヘルメットを抱えた革ジャンの男が
トレーを持って坐った
カウンターの端には
さっきからずっと
パソコンで漫画を見ている男の子が坐っている

ガラスの向こうは喫煙席
煙の中にぽつん、ぽつんと
顔が見える

明日
また寸法の合わない空気の中へ
出て行く

それまで少しだけ
無関係な他人の中に
誰も知らない自分を置いておく


(抒情文芸128号 入選)
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by hannah5 | 2009-04-25 13:25 | 投稿・同人誌など

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