合わせ鏡   


子どものころ
ひどく叱られて
叩き割られた胸の内と
理不尽な悲しさが
洪水のようにせりあがってくる

ひどく叱られた夜
涙にまみれた悔しさと
針のように突き刺さった悲しみを
胸の底に沈めて
言い訳をすることも
悲しみを現すこともできなかった

炎のような痛みにふたをして
火が消えるまで
消えて燃えかすになり
燃えかすがすっかり冷たくなるまで

咽喉元にこみあげてくる固まりを
ふたたび下へ押し込んで
前方をひたすら見つめつづけた

わたしをひどく叱った人たちが
あのころのわたしのように
言い訳をすることも
悲しみを現すこともできなくなって
ぼんやりと不安な目をわたしに向ける

こんなとき
言葉にすることができないまま
小石のように蹴っ飛ばされて
それでも黙るしかなかったあのころが
あの人たちを見ていると
どうしようもなく
あふれてくる


(抒情文芸129号 入選)
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by hannah5 | 2009-04-25 13:27 | 投稿・同人誌など

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