未完   


どこにも流れつかない夜が ひとつ
きょうの終わりの
ゆるやかに落ちてくる時間の中に
ぽつんと漂う

少しずつ濃くなる藍色の街の中で
じっと見ていたショーウィンドウの
まばらな人影
夏の異国の深夜
人気の絶えたカフェで聞いていた
延々とつづく身の上話
夜の闇に
ぼんやりと浮遊しはじめた意識の中に
何の脈絡もなく突然降りてきた蜘蛛の話一匹
南国に夜が深くなるころ
裏通りのウィンドウから灯りが消え
闇の中で他人の顔いろをにじませる
夜の都会で
洪水のように押し寄せては
闇に吸い込まれていくヘッドライト

つかまえることができずに
眺めているしかなかったそれらの夜に
切れ切れに落ちていったわたしの残像

風の中に夢を追い
風に追われて夢に棲み
流れていく夜を
胸の内に抱きしめることもできず
やがてくる朝までの間に
ひとしきり流れ

夜がまたひとつ
拾われないまま
戻ることを忘れて


(詩と思想2008年11月 佳作)
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by hannah5 | 2009-04-25 13:33 | 投稿・同人誌など

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