人気ブログランキング | 話題のタグを見る

叫び   


思いが鋭角に沈殿している空気の底に
息をひそめて身を沈める
おもりのような痛みが
亀裂を作りながら
先へ先へと走り続ける
亀裂の隙間にはさまっているのは
生まれてこなかった言葉たちだ
小さなそれらの言葉たちが
細い蜘蛛の糸のように
亀裂の中いっぱいに絡みついている
蜘蛛の糸が小刻みに震えて
微熱が亀裂を覆う

それは人の目に触れることも
人の耳に達することもなく
空気の底で
活火山のようにうごめき続けてきた
ひと時かふた時、あるいはみ時、
もしかしたら計ることも不可能なほど
長さを連続させてきた時のどこかで
形や音になりきれなかった言葉たちが
精いっぱいエネルギーを蓄積して
亀裂の表面に浮かびあがり
空気を振動させる

悲鳴にも似た
あるいは怨念にも似たそれらの言葉たちが
行き場を失い
亀裂の入ったことのない表面から
突然噴出する


(詩と思想2009年1・2月 入選・佳作)

by hannah5 | 2009-04-25 13:35 | 投稿・同人誌など

<< それぞれ 未完 >>