叫び
2009年 04月 25日
思いが鋭角に沈殿している空気の底に
息をひそめて身を沈める
おもりのような痛みが
亀裂を作りながら
先へ先へと走り続ける
亀裂の隙間にはさまっているのは
生まれてこなかった言葉たちだ
小さなそれらの言葉たちが
細い蜘蛛の糸のように
亀裂の中いっぱいに絡みついている
蜘蛛の糸が小刻みに震えて
微熱が亀裂を覆う
それは人の目に触れることも
人の耳に達することもなく
空気の底で
活火山のようにうごめき続けてきた
ひと時かふた時、あるいはみ時、
もしかしたら計ることも不可能なほど
長さを連続させてきた時のどこかで
形や音になりきれなかった言葉たちが
精いっぱいエネルギーを蓄積して
亀裂の表面に浮かびあがり
空気を振動させる
悲鳴にも似た
あるいは怨念にも似たそれらの言葉たちが
行き場を失い
亀裂の入ったことのない表面から
突然噴出する
(詩と思想2009年1・2月 入選・佳作)
by hannah5 | 2009-04-25 13:35 | 投稿・同人誌など