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村ぐらし Ⅱ   


緑の中から
あふれてくる風が
歩くわたしを
吹きぬける

ここまではきのう、
ここからはきょう、と
線を引いて歩いている
きのうまでの
切り傷だらけにした時間は
歩いていけば
治るはずだから

ゆるゆると流れていた季節の
やわらかな気分に会いたくて
風の中を歩きつづける

(どのくらい歩けば)
(あの頃の気分に会えるのだろう)

あの頃は
季節がぼんやりとしていた
おおからでつつましく
切り傷があることさえ
知らなかった

(ここまではきのう、)
(ここからはきょう、)

ごうごうと流れる川が
生い茂った草の下から
立ちのぼる
草の中に足首を沈めて
ゆるやかな勾配を
のぼっていく

頂上近く
風が透明に
変わりはじめる

夢のように
未知の暮らしを探しつづけたあの頃が
ふっと風の中にあらわれる

足をのばし
手をのばし
風の中のその奥の
はるかな深みへ入っていく

(ここからはきょう、)

似ているかたち
似ているいろ

けれど
線の向こうのきょうは
きょうの厚さと
きょうの重みをもち
うしろを振り向かず
あの頃の気分を映しださない


(旋律22号所収)

by hannah5 | 2009-04-25 13:51 | 投稿・同人誌など

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