呼吸   


息をするのがひさしぶり
みたいな感じで息を吸いこむ
胸の奥で硬くなっていた空気が
ゴムまりのようにふくらむ
ひび割れた感触が
つ、
と広がった

同じ方向に回転する日々があり
回転速度に合わせてなんとか乗れた日は
神経を逆なでしないように
息をこらしてじっと回転している
初めはばらばらになりそうだった細胞たちが
やがて上手に整列して
回転している日々に乗れるようになり
流れていく一部になる
流れていく細胞たちの群落が
今日の表面に浮かんでこないように
我を忘れて流れていく
(今日を見つけないように)
(今日に見つからないように)

冬の午後のゆるんだ空の下

陽にあたる細胞たちの流れが緩慢になる
眠気が紡ぎだされてあたたまったころ
深く息を吸いこむ細胞があり
ふ、と、
流れることを忘れて歩きだす 立ち止まる

欠伸をひとつ
 ひとつ
  ひとつ
   ひとつ
    ひとつ
     ひとつ

次々に共鳴していく欠伸のいちばん奥ふかくで
息をするのは久しぶり

みたいな


(詩と思想 6月入選・佳作)
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by hannah5 | 2009-06-20 13:53 | 投稿・同人誌など

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