いちまいずつ   


少しだけ
わたしが出ていって
少しだけ
あの人が出ていって
縄目模様が
ゆうらりこ ゆうらりこ
かわるがわるにできていく

編みこまれたわたしは
透明なうす桃いろの霞の中で
ぼんやり突っ立っている
あの人は平たくなったり明るくなったり
しゅん、と縮んでしまったり

縄目模様をほどいてみると
わたしのいちまいがそのままあって
あの人のいちまいがそのままあって
わたしのいちまいは
たたんだりしまったり出したり伸ばしたり
あの人のいちまいは
縮めたり折ったり広げたりゆるめたり

しゅるしゅるっと炭酸を注(つ)いで
泡の中で溶けてしまうわたしは
溶けてもいいよ春いちまい
と思うのだけれど

泡があふれて溶けだすわたしは
わたしなりのいちまいを
ふわふわと炭酸の中で広げてはたたみ
たたんでは広げ
あの人なりのいちまいが
あふれつづける泡の中で溶けもせずに
ゆるめたり折ったり
折ったりゆるめたりしているから
ぽんぽんとはたいてもういちど初めから
あふれつづける泡の中で
わたしなりのいちまいとあの人なりのいちまいを
いちまいずつ

(詩と思想9月号入選)
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by hannah5 | 2009-09-12 23:05 | 投稿・同人誌など

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