そろそろねぐらに帰ります   


ゆっくり歩いていると
早く行けと言う
走り出すと
止まれユーターンしろと言う
引き返すと
ダメじゃないか右へ曲がれと言う
たぶん今度も怒られるから左へ曲がるよ
するとどこからともなくぶぉぶぉっという音がしたかと思ったら
そこらじゅうから声が吹き出してくる
そうなんだよそうなんだよと反応していると
いちいち反応するなと言う
黙っていると
少しは言葉をしゃべろと言う
ひと言ふた言しゃべると
そんな寡黙でどうする今は多弁の時代だと言う
少ししゃべりすぎではありませんかと言うと
言葉は簡潔に短い方がいいと言う
そうですねと短く言うと
いつになったらお前は納得するんだと言う

少々退屈していたからあちこち回ってきたが
錯綜と混乱が混ざり合ってそろそろ時間切れだ
もう帰るよと言うと
お前の家はどこなんだと聞く
ここをまっすぐ行くと右に行く道があるからしばらく行くと三叉路があって真ん中の道を行くと突き当たりになるので左へ曲がり一つ目を右へ行くと空き地があってそれを突っ切って行くと家が一軒見えてくるので家の反対側へ出ると灯りが灯っているからそこでぶぉぶぉっと言うのが私への合図ですと言うと
相変わらずわかりにくいやつだなそれでどうするんだと聞く
こもる支度をしますと言うと
どこにこもるんだと聞く
長すぎず短すぎず早すぎず遅すぎず右にそれず左にそれず寡黙にならず饒舌でもなく理解と納得が交差したあたりですと答えておいた

(詩と思想5月号入選)
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by hannah5 | 2010-05-04 11:43 | 投稿・同人誌など

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