アーサー・ビナード氏講演会 ~ 『古くならないニュース』   


6月26日(土)午後2時より、かながわ労働プラザで横浜詩人会主催による「第20回現代詩公開セミナー」としてアーサー・ビナードさんの講演会がありました。アーサー・ビナードさんは詩人、エッセイスト、児童文学者として多くの著書を出されているほか、文化放送や青森放送でラジオのパーソナリティーも務められるなど、マルチな活躍をされている方です。講演会のタイトルは「古くならないニュース」。エズラ・パウンドの”Literature is news that stays news”(文学は古くならないニュースである)の言葉から取ったものだそうです。

アーサー・ビナードさんの名前は現代詩手帖などで拝見していたので存じ上げていたのですが、作品は1篇も読んだことがなかったので、どんな方なのかは今日の講演を聴くまではわかりませんでした。結論から言うと、お話の中身が多様で多色で、日本とアメリカだけにとどまらず、世界のいろいろな国の言葉やニュースの話が出てきたり、日本の田舎で手すきの和紙を作っているオランダ人の話や和の話があったり、オネエ言葉に触れてみたり、日本語と英語両方の言葉に絡めて現代の日常の話がふんだんに出てきてとても面白かったです。外国に興味があってその国で暮らしているアメリカ人の話ってえてして面白いのですよね。私にとって特に参考になったのは、創作と翻訳の違いについての話でした。創作は地図を作っていくこと、翻訳は地図は最初からあるが地図の通りに行けないことが多く、それをどうするかが翻訳者の課題であるというお話でした。「翻訳は創作でもある」と言われたことが印象的で、講演会が終ってから直接ビナードさんにふだん私が思っている翻訳に対する疑問などをぶつけてみました。原作に日本語にない表現や概念が書かれている場合、翻訳者は直訳するのではなく、作者の意図を汲んで意訳をすること、それは原作の表現とはまったく違うものになるかもしれないが、原作の意図を伝えるために日本語で創作すること。ビナードさんの答えは大体こんな感じでした。さらに突っ込んでいろいろ質問したかったのですが、他にもビナードさんの書籍にサインを求める人やビナードさんとお話したい人たちがたくさんいたのでそれ以上は聞きませんでした。帰り際に、ボブ・ディランの曲”Forever Young”を『はじまりの日』というタイトルで子どもの絵本にして翻訳されたものを購入して帰途につきました。

久しぶりに文学が面白く思えた日でした。いつかまたどこかでアーサー・ビナードさんに会えたら素敵だなと思います。





アーサー・ビナード(Arthur Binard)

1967年、米国ミシガン州生まれ。ニューヨーク州のコルゲート大学で英米文学を学び、卒業と同時に来日、日本語での詩作を始める。 2001年に詩集『釣り上げては』(思潮社)で中原中也賞、05年に『日本語ぽこりぽこり』(小学館)で講談社エッセイ賞、 07年に『ここが家だ――ベン・シャーンの第五福竜丸』(集英社)で日本絵本賞、08年には『左右の安全』(集英社)で山本健吉文学賞を受賞。詩集に『ゴミの日』(理論社)、訳詩集に『日本の名詩、英語でおどる』(みすず書房)、エッセイ集に『日々の非常口』(朝日新聞社)、『出世ミミズ』『空からきた魚』(ともに集英社文庫)、絵本に『くうきのかお』(福音館書店)、『はらのなかのはらっぱで』(フレーベル館)、翻訳絵本には『ダンデライオン』『どんなきぶん?』(ともに福音館書店)、『あつまるアニマル』(講談社)、『ひとりぼっち?』(徳間書店)、『カーロ、せかいをよむ』『カーロ、せかいをかぞえる』(ともにフレーベル館)、『焼かれた魚――The Grilled Fish』(パロル舎)などがある。「花椿」「マガジンアルク」などに連載中。文化放送と青森放送でラジオ・パーソナリティーもつとめる。
(アーサー・ビナードさんのHPよりコピー抜粋。)

アーサー・ビナードさんのHP:日本語ハラゴナシ
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by hannah5 | 2010-06-26 21:28 | 詩のイベント | Comments(0)

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