父の行間   


ひび割れた空気を握りしめて
今夜も眠る
夕べもそうだった
その前も
そのずっと前も
たぶんあしたもあさっても

おぅおぅと泣かない
涙をどこかにしまったまま忘れている
もしかしたら
ふかぶかと茂った苔の中に
落としたのかもしれない

(見つからないよ
(どこを探しても見つからない

ガタピシとひび割れているから
直そうと思っても
硬くて直すこともできない

空気を飲みこむのが得意で
技術を磨いてワンランクアップしたのに
空気を吐きだすのは苦手で

タイミングがむずかしい
こことそこを持って
くいっと吐きだすのが
どうしてもうまくいかない

そうして表面だけはなでつけておいた
強くうつくしくたくましく
どこから見てもほれぼれするほど無駄がなく

いつのまにか下から滲んでくる
ひびの割れ目のヒビの否否
表面に映らないようにね、
と言っているそばから
ひび割れが広がりつづけて

それでも
知らん顔して遠くを見ていた


(新現代詩10号掲載)
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by hannah5 | 2010-07-07 10:53 | 投稿・同人誌など

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