ある夜   


薄墨いろの箱が
引き延ばされてある



上る空気
下る道
手幅ほどに押さえられた平面が下りてくる
家と家の繋ぎ目

平坦なプラスチックがつづく
風のない紋様の空気

息をするものが不機嫌に寝そべり
神経質な目をして身を潜める

ぶどう色の眼が見開かれて
じっと見つめる切れ長の
しずかな底

不遜な空気が
音もたてずに湧きあがる
灯りを避けて忍びこんだ暗がりの中で
小さな抵抗を貼りつけて
たやすく絡め取られない季節を生み落とす

               *

歩くことを好まない季節を
ひとつ、思いだす
よく似たいろが空気の中に滲みだしている

               *

平行に落ちていく空気

波だたない水際

音のない空間を
踏む 息遣い


(旋律25号所収)
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by hannah5 | 2010-07-26 23:21 | 投稿・同人誌など

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