現象   


過去が気球のようにがらんどうになっている
明るい乳白色の空気に覆われたその空間は
なんだかとても清々としていて
すっぽりと根こそぎ抜き取ってしまったように存在感がなく
一体わたしはどこをどう通って現在にたどり着いたのかわからないほど
空洞になっている

わたしは確かに過去のある一点で現れ
それ以来ずっと続いてきて
自分の色を染み出させてみたり
だれかの形をもらって自分流にアレンジしてみたり
ころころと息の粒を吐き出しては消滅させたり存在させたり
わりと地上すれすれに歩いたり走ったり移動したりしてきたと思うのだけれど

この前中学の同窓会があって
今まで一度も出たことがなかったから
― 憂鬱な時代でもなかったけれど
― 小さな裂け目が連続していたのを思い出して懐かしむほど後ろ向きでもないし、でも
このあたりで一度くらいは顔を出しておこうと思って行ったのだけれど
あの時はああだったねというのと現在はこうなんだというのをひと繋ぎにして
それらしい顔をして笑っていることがどこか遠い世界の話みたいで
わたしは結局あの人たちのようにまだそこには到達してないみたいで

かすかなずれが薄い膜を張った

「Aちゃん、どうしてたの?
KちゃんとTちゃんでAちゃんどうしてるんだろうねって話してたんだよ」
本当は懐かしそうな嬉しそうな顔をして
薄い膜なんか一気に破いてしまえばよかったのだろうけど

ガラスって壊れやすい
握っていた時間がある日
パリン!と粉々に砕けてしまったら
それまでそこに映っていた過去も現在も未来も
ぜんぶ砕けて散ってしまう

それ以来
足取りはずっと空っぽなんだ

(新現代詩11号所収)
[PR]

by hannah5 | 2010-11-02 19:09 | 投稿・同人誌など

<< おとうと かわいすぎ >>