あわい   

 
 布団の中でぼんやりと暖かさにくるまりながら空洞のような不安定が徐々に膨らんでいくのを見ている 薄ら寒い期待と不安 膨らみは一層増して見上げればわたしの頭上を乳白色の雲が覆っている 雲を突き抜けることができれば前に進める 突き抜けることができなければ冬に逆戻りするのだと布団の中でなんとなく思っている 
 (でもそれは憂鬱な予測)
 何度もつまずいては転んだけれどそれでもなんとか起き上がってこられたから今さら冬に逆戻りすることなど考えるのも馬鹿げている 冬の次は春が来る 暦の上でも季節の上でも 逆戻りすることができるのは壊れた時計だけだ
 首の長いバネの猫の時計 買ってから半年もたたないうちに秒針がイカレテしまった 六時三十分からなんとか六時四十五分まで上がった途端に一気に六時三十分に戻る そこからまた六時四十五分目指して上がろうとして上がった途端にストンと落ちる かわいい猫の時計だからまだ許せるけど
 考え事をしているうちに眠ってしまった 長針と短針がストンストンと落ちる夢を見た
 現実感のない空気のような落下 不安も期待もどこか遠い国の出来事のようで痛みを感じない 胸の中が膨らんでやわらかいものに触れる 奥の方に棲んでいた不安がもそもそと立ち上がる 出て行きそうな気配だ 戸口まで行くとふと立ち止まって振り返る
 (現実の世界が笑ってしまうくらい夢の中って痛くないんだよね)

(階音8号掲載)
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by hannah5 | 2011-07-20 00:41 | 投稿・同人誌など

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