日本の詩を読む V   


12月2日(金)は「日本の詩を読む」の講義でした。取り上げたのは那珂太郎の詩集『音楽』でした。(『音楽』は1965年読売文学賞を受賞しています。)

1922年生まれの那珂太郎さんは、現在戦後詩詩人の最長老となられました。国文学者で、萩原朔太郎研究の第一人者でいらっしゃるということです。那珂太郎の作品を読んだことがなかった私は現代詩文庫を一夜漬けで読み、ほとんど何も得ないまま講義に出席しました。しかし、野村喜和夫さんの講義-
象徴主義から出発したという話、作品はオノマトペを使ったものが多く、音楽性があるという話、一見言語遊戯に見えるが言語遊戯に終わっていないという話等々-を聴くうち、その作品の深さに触れることができました。教室では「繭」と「<毛>のモチイフによる或る展覧会のためのエスキス」を読みましたが、一人だけで読んでいるととても読み込めなかった作品「<毛>のモチイフによる或る展覧會のためのエスキス」をここに置いておきます。



<毛>のモチイフによる或る展覧會のためのエスキス

  a

からむからだふれあふひとふとひふはだにはえる毛

なめる舌すふくちびる噛む歯つまる唾のみこむのど のどにのびる毛
くらいくだびつしり おびただしい毛毛毛毛毛毛毛毛



  b

けだものの毛くだものの毛ももの毛ものの毛
けものの毛
けばだつ毛
けばけばしい毛
けむたい毛
けだるい毛倦怠の毛
けつたいな毛奇つ怪な毛經快な毛
けいはくな經毛驗の毛敬虔な形而上の毛警視廳の警守長の
毛けむりの毛むっりな毛むだな毛
けちんぼの毛
げびた毛? カビた毛
おこりつぽいをとこの毛?
ほこりつぽいほとけの毛
ほとけの毛?
  のほとりの毛



 c

ガ毛ギ毛グ毛ゲ毛ゴ
餓鬼 劇 後家 崖 玩具 ギヤング 銀紙 ギンガム
の毛



 d

ゆらゆりゆるゆれゆれる藻
ぬらぬりぬるぬれぬれる藻
もえるもだえるとだえるとぎれるちぎれるちぢれるよぢれるみだれる
みだらなみづの藻のもだえの毛のそよぎ



 e

目目しい目
耳つ血い耳
鼻鼻しい鼻
性性洞洞
すてきなステツキ
すて毛なステツ毛


(那珂太郎詩集『音楽』より)







那珂太郎(なか たろう)

1922年 福岡市生まれ。幼少時をすごした町はすべて戦争中の空襲で消失し、人の記憶にあるほか、もはやこの世に存在しない
1943年 東大国文卒。卒業後、海軍予備学生として土浦海軍航空隊に入隊。終戦まで海軍兵学校国語科教官として服役。
詩集に『ETUDES』、『音楽』、『はかた』、評論集に『萩原朔太郎その他』、『萩原朔太郎詩私解』、随筆集に『欝の音楽』などがある。
(現代詩文庫『那珂太郎詩集』よりコピー抜粋)
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by hannah5 | 2011-12-03 23:25 | 詩のイベント | Comments(0)

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