日本の詩を読む VI
2012年 01月 07日
1月6日(金)は「日本の詩を読む-戦後の名詩集を読む」の最終講義でした。取り上げたのは中江俊夫の詩集『語彙集』(1972年、思潮社)でした。
中江俊夫のコアなファンならともかく、この詩集を読んだという人は恐らくあまりいないのではないかと思います。実際、教室でも『語彙集』を読んだことがある、または知っているという人はほとんどありませんでした。ページをめくってみると単語が並んでいて、一応行分け詩の形にはなっていますが、単語同士の関係や繋がりがよくわかりません。しかし、この詩集には長谷川龍生、小海永二、北川透といった人たちの紹介文が「中江俊夫の世界」という別刷りの小冊子で付録としてついています。しかも、この詩集は高見順賞を受賞します(1973年第3回高見順賞)。
教室では「語彙集第二十九章」(部分)と「語彙集第九十章」を読みました。読んでみてもすぐにはわかりませんが、しかし、じっとりとした何かが伝わってきます。普通の日本語から見るとまるで意味のない言葉同士なのに、その向こう側に作者のねっとりとした世界が広がっているのを感じます。
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語彙集第九十章
ずんぐり肉ぼってり肉あんぐり肉
やんわり肉ふんわり肉むっちり肉
しんねり肉むっつり肉ぺったり肉
つるつる肉しとしと肉しっとり肉
むんむん肉もんもん肉すんすん肉
のらり肉くらり肉くるり肉
ぽちゃぽちゃ肉ぺたぺた肉ぬるぬる肉
べちゃべちゃ肉ずぶずぶ肉うんうん肉
ぎっこん肉くらくら肉よいしょ肉
ばったん肉よしよし肉こらしょ肉
ぐんにゃり肉くにゃくにゃ肉くたり肉
うふん肉うむうん肉むうん肉
いん肉にん肉おお肉
ああ肉み肉ひー肉
(中江俊夫詩集『語彙集』より)
中江俊夫(なかえ としお)
1933年福岡県久留米市生まれ。
岡山県立倉敷天城高等学校時代に永瀬清子の影響で詩に興味をもつ。
関西大学文学部国分学科卒業。
「楷」同人。一時「荒地」の同人。
詩集:
『暗星のうた』(1957)『散文詩集』(1959)『中江俊夫詩集』(1971)『語彙集』(1972)『火と藍』(1977)『不作法者』(1979)『うそうた 少年詩集』(1986)『就航者たち』(1987)『気体状』(1994)『梨のつぶての』(1995)『田舎詩篇』(1997)『伝言』(2010)翻訳:
『地球のすすり泣き』(ジュール・ラフォルグ詩集)(1976)
(Wikipedia 「中江俊夫」よりコピー抜粋)
by hannah5 | 2012-01-07 20:36 | 詩のイベント