それぞれ   


ここにある
わたしたちのそれぞれの空間
わたしたちのまわりにぽっかりとあいた空洞
詰めることと埋めることとが泳いでいる空間に
しずかな一滴を垂らして
しいんと座ってみる

座るということは
もっともおごそかな思いの発露
空洞の中心に腰を据え
そよぐもの
流れるもの
漂いうつろうものの
順々に現われては消えまた現われるさまを
手に取り身にまとう

小さな空洞が繭玉のように
ぽっかりと浮かびあがり
いくつも寄り集まり
お互いの距離を等しく保ちながら
繭の中から
息がぷつぷつと気泡になって生まれつづける

目の前で生まれてくる
乳白色の気泡をやりすごす
となりの
となりのとなりの
そのまたひと呼吸おいたとなりの
浮かびつづける空洞の
空洞たちの
わたしの
わたしたちの
似ているようで似ていない
それぞれ

(詩集『あ、』より)






新川和江さんが評価してくださった作品。
新川さんが評価してくださったのは、他に「想う」「入眠」「集約」です。

新川さんとは家が近くて(同じ町の4丁目ほど離れた所に住んでいます)、いつだったか家の近くの駅で、新川さんがSuicaを購入されるのをお手伝いしたことがあります。その時のことは覚えていらして、新川さんが親しくしていらした新井豊美さんの教室に通っていたことにも驚かれて、詩集のお礼に丁寧な葉書をいただきました。

新川さんの葉書もそうですが、とても手の届かない所にいると思っていた先輩の詩人の方からお礼の手紙や葉書をいただくと、なんだかとても嬉しいものです。
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by hannah5 | 2013-03-18 16:13 | 作品(2009~) | Comments(2)

Commented by りり at 2013-03-23 17:07 x
はんなさん、こんにちは。

今日はとてもよいお天気で、桜が次々咲き始めました。
新川さんや荒井さんとのご縁、とても不思議だなぁと思いながら読ませていただきました。

はんなさんの詩を読んでいると、座ることひとつとってもその人の光や影が映されていくのだと思い、ますます不思議な気持ちになりました。

私の作品を取り上げてくださって、ありがとうございます。
感想までいただいて、とても心強く思っています。

また、遊びに来ます(^-^)
Commented by hannah5 at 2013-03-25 15:36
りりさん、こんにちは。

こちらも桜が満開です。
夜桜がとってもきれいですよ^^

新川さんはね、すごく自然体でお会いできたんです。
2年ほど前の詩と思想の新年会の時なんですが
行く途中、駅から降りてなんとなく不安気な新川さんをお見かけしたので声をかけました。
道すがらお話したのは介護のことで、新川さんもお年ですから、介護のヘルパーさんには来ていただいているかとか、そんなことをいろいろお話しました。
こう言っては何ですが、私には詩人の大先輩というより介護の必要な高齢者を気遣うという感じでお話しました。
だから、その後駅でお会いした時、身近に感じたんですね。
新井先生も自然体で、野木京子さんを介してですが、お会いしました。
私ね、最近、男性の詩人より女性の詩人の方に惹かれるものがあるんです。

感想ありがとう!
そちらにもまた行きますね。

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