La Voix des Poètes (詩人の聲) ~野村喜和夫さんの朗読会~   


4月27日(土)午後7時半から、野村喜和夫さんの朗読会がありました。(天童大人さんプロデュース)(於数奇和)今回は2番目に新しい詩集『難解な自転車』の作品を朗読されました。

私が野村さん個人に慣れたせいなのか、あるいは野村さん自身が(詩人の聲で)8回目の朗読で慣れたせいなのかわかりませんが、リラックスした雰囲気の中、言葉が力強い波動となって伝わってきて、心地よい朗読会だったと思います。

印象に残った作品はいくつかありますが、その中でも「人生の夜」は人生のペーソスと軽妙さと、野村さん独特のユーモアとエロスがあってよかったと思います。

朗読会後、野村さんや天童さんたちは二次会に行かれたましたが、私は会場で出会った詩友2人とごはんを食べに行き、いろいろ語り合って、夕べは思いがけず楽しい時間を過ごさせてもらいました。


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招待状の裏に書かれた野村さんの自筆



*****



人生の夜


そして阿呆のスープにたどりつく、
思えば長い道のりだった、

誕生の丘の、
毛に覆われた割れ目からころがり出て幾年月、

鳥居を抜け、
校門を抜け、

春の夜の夢や秋の夜の淋しさも抜け、
花屋や葬儀屋も抜けて、

そして阿呆のスープにたどりつく、
テレビのスイッチを切り、

携帯も放り投げて、
鍋だ鍋、

鍋にオリーブオイルを入れて熱し、
スライスしたにんにくを泳がせる、

BGMは何にしようか、
要らないな、

この夜のこの、
押しつぶされそうな沈黙でじゅうぶん、

九百人のおばあさんの、
祈りの尻の下の小さな虫だもの、われわれは、

と七つの「の」を踏んで、
踏んで。

そして阿呆のスープにたどりつく、
にんにくがきつね色に色づいてきたら、

ブイヨンを注いでひと煮立ち、
ほら、

死んだ時刻たちも集まってきて、
顔を寄せているよ、

塩で味をととのえたら、溶き卵を流し入れて、
パプリカ、パセリなどを振れば、

もう出来上がりの、
この阿呆め、アホ、

スペイン語で、
にんにくのことなんだけどさ、

舌、
やけどするぞ。


(野村喜和夫詩集『難解な自転車』より)
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by hannah5 | 2013-04-28 19:22 | 詩のイベント | Comments(0)

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