日本の詩を読む XII 第3回 ~西脇順三郎へのアプローチ~   


西脇順三郎の3回目の講義が1月19日に行われました。今回のテーマは「転回― 『旅人かへらず』 の世界」で、『旅人かへらず』 におけるニーチェの影響や、ニーチェの永遠回帰と正反対の立場をとった西脇の考え、幻影の人とは何かなどを中心に講義が行われました。 『旅人かへらず』 は 『Ambarvaria』 と比べるとかなり日本的な作風に変わっていて、北園克衛から「風邪をひいた牧人」とまで批判されましたが、西脇自身は詩に対しての思いは 『Ambarvaria』 の時と変わっていないと弁明しています。読んだ作品は168篇の詩篇の中から、1から10までと、167、168を読みました。






旅人は待てよ
このかすかな泉に
舌を濡らす前に
考へよ人生の旅人
汝もまた岩間からしみ出た
水霊にすぎない
この考へる水も永劫には流れない
永劫の或時にひからびる
ああかけすが鳴いてやかましい
時々この水の中から
花をかざした幻影の人が出る
永遠の生命を求めるは夢
流れ去る生命のせせらぎに
思ひを捨て遂に
永劫の断崖より落ちて
消え失せんと望むはうつつ
さう言ふはこの幻影の河童
村や町へ水から出て遊びに来る
浮雲の影に水草ののびる頃



一六八


永劫の根に触れ
心の鶉の鳴く
野ばらの乱れ咲く野末
砧の音する村
樵路の横ぎる里
白壁のくづるる町を過ぎ
路傍の寺に立寄り
曼荼羅の織物を拝み
枯れ枝の山のくづれを越え
水茎の長く映る渡しをわたり
草の実のさがる藪を通り
幻影の人は去る
永劫の旅人は帰らず
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by hannah5 | 2015-01-20 18:00 | 詩のイベント | Comments(0)

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