詩に出会う(1) 映画 『風に立つライオン』 より
2015年 03月 21日
風に立つライオン
突然の手紙には驚いたけど嬉しかった
何より君が僕を怨んでいなかったということが
これから此処で過ごす僕の毎日の大切な
よりどころになります ありがとう ありがとう
ナイロビで迎える三度目の四月が来て今更
千鳥ヶ淵で昔君と見た夜桜が恋しくて
故郷ではなく東京の桜が恋しいということが
自分でもおかしい位です おかしい位です
三年の間あちらこちらを廻り
その感動を君と分けたいと思ったことが沢山ありました
ビクトリア湖の朝焼け 100万羽のフラミンゴが
一斉に翔び発つ時 暗くなる空や
キリマンジャロの白い雪 草原の象のシルエット
何より僕の患者たちの 瞳の美しさ
この偉大な自然の中で病いと向かい合えば
神さまについて ヒトについて 考えるものですね
やはり僕たちの国は残念だけれど何か
大切な処で道を間違えたようですね
去年のクリスマスは国境近くの村で過ごしました
こんな処にもサンタクロースはやって来ます 去年は僕でした
闇の中ではじける彼等の祈りと激しいリズム
南十字星 満天の星 そして天の川
診療所に集まる人々は病気だけれど
少なくとも心は僕より健康なのですよ
僕はやはり来てよかったと思っています
辛くないと言えば嘘になるけど しあわせです
あなたや日本を捨てた訳ではなく
僕は「現在(いま)」を生きることに思い上がりたくないのです
空を切り裂いて落下する滝のように
僕はよどみない生命(いのち)を生きたい
キリマンジャロの白い雪 それを支える紺碧の空
僕は風に向かって立つライオンでありたい
くれぐれも皆さんによろしく伝えてください
最后になりましたが あなたの幸福(しあわせ)を
心から遠くから いつも祈っています
おめでとう さようなら
(さだまさし作詞作曲「風に立つライオン」)
ひと言
さだまさしが1987年に発表した「風に立つライオン」は、ケニアで医療にあたった実在の日本人医師柴田紘一郎氏をモデルにしたものです。この曲に感動した俳優の大沢たかおがさだまさしに小説にすることを依頼、2013年、さだまさしは小説『風に立つライオン』(幻冬舎文庫)を発表しました。そして2014年、大沢たかおの企画・主演により小説の映画化が実現しました。現在、映画は日本全国で上映中です。
大きなスケール、抒情詩としての言葉、国境を越えて繋がる生命(いのち)―いろいろな詩の書き方はあるけれど、詩はこんなふうに書きたいとどこかでずっと思ってきた私の気持ちを表してくれたような作品です。
映画 『風に立つライオン』 公式サイト
by hannah5 | 2015-03-21 18:44 | 詩に出会う