日本の詩を読む XIII ~石原吉郎を読む(第6回)   


6月29日(月)、「石原吉郎を読む」の6回目の講義が行われました。今回のテーマは「石原吉郎と現代詩」で、石原吉郎の現代詩への登場を、デビュー作となった「夜の招待」を中心に講義が進めされました。「夜の招待」は、投稿雑誌「文章倶楽部」(現代詩手帖の前身)に投稿した作品で、特選に選ばれたことがきっかけとなって注目されるようになりました。その時の選者は鮎川信夫と谷川俊太郎だったそうです。その他、石原吉郎と鮎川信夫との比較、石原吉郎と吉岡実との比較、石原吉郎の粕谷栄市への影響なども考察の対象に講義が行われました。



夜の招待


窓のそとで ぴすとるが鳴って
かあてんへいっぺんに
火がつけられて
まちかまえた時間が やってくる
夜だ 連隊のように
せろふぁんでふち取って――
ふらんすは
すぺいんと和ぼくせよ
獅子はおのおの
尻尾(しりお)をなめよ
私は にわかに寛大になり
もはやだれでもなくなった人と
手をとりあって
おうようなおとなの時間を
その手のあいだに かこみとる
ああ 動物園には
ちゃんと象がいるだろうよ
そのそばには
また象がいるだろうよ
来るよりほかに仕方のない時間が
やってくるということの
なんというみごとさ
切られた食卓の花にも
受粉のいとなみをゆるすがいい
もはやどれだけの時が
よみがえらずに
のこっていよう
夜はまきかえされ
椅子がゆさぶられ
かあどの旗がひきおろされ
手のなかでくれよんが溶けて
朝が 約束をしにやってくる


(石原吉郎詩集 『サンチョ・パンサの帰郷』 より)
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by hannah5 | 2015-06-30 20:41 | 詩のイベント | Comments(0)

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