連続講座「大岡信の詩と真実」 5   


せたがや文学館で行われていた連続講座の最終回は吉増剛造さんの講演でした(11/1)。吉増さんが用意された資料は、A3用紙4枚の両面に詩や雑誌の掲載記事が細かな文字で隙間なくコピーされ、随所に吉増さんの文字や線が書き込まれていました。思わず読み飛ばしそうになるところを、最初から丁寧に読んでみると、実は吉増さん、私たち参加者のためにかなり親切に書き込みをなさっていたようで、入念に時間をかけて用意された資料であることがわかります。(実際、吉増さんはこの資料を1週間かけて用意されたそうです。)資料の冒頭には「大切な??(判読不明)ニチヨービの午後、.......今日のおいでをふかく感謝をいたします。貧しい乏しい、個人的な記憶にそうようにしてのお話し、…..というのよりも語りになるのでしょうが、出来うるかぎり正直に…..(「オフ・レコ」のようにとイシキもいたしまして、…)語ってみようと、心に決めておりました。…..(ナゼ飯島氏、大岡氏だったのか?たとえば谷川氏/入沢氏ではなくって)とでも成るのでしょうか、…..。」と手書きの書き込みがあります。資料は「お燈(どう)明、、、、、水底(みなそこ)ノ笛(ふえ)」(燈明は「とうみょう」ではなく、飯島耕一さん風に「どうみょう」と読むのだそうです。)と題され、8月に亡くなった「大切な親友」であった井上輝夫さんへの追悼文に始まり、飯島耕一さんの詩や雑誌、同人誌などへの寄稿文、2005年の『國文舉』に掲載された大岡信さんと吉増さんの対談全文、大岡さんについての天沢退二郎さんの引用文、大岡さんが十代の頃に書いた詩「水底吹笛」、「巨きな驚き」である大岡信さんのことを書いた吉増さんの詩などが盛り込まれていました。1時間半休むことなく語り続けられた講演は、「三田詩人」を出し始めて飯島耕一さんと大岡信さんが参加された時の話、生涯の友だった井上輝夫さんの話、寒気がするほど朗読が嫌いだったという飯島さんの話、大岡さんの大きさの驚きの話等々、吉増ワールドがはじけて溢れかえるようで、聴いていた人たちもかなり楽しんでいた様子でした。それ以上に楽しんでいらしたのは吉増さんだったようで、「今日は楽しいな。おいしいワインでも買って帰るかな。」と本当に楽しそうに語られていたのが印象的でした。

今回吉増さんの話を聴き、資料を読んでいて発見したのは、私自身はそれほど吉増さんの詩に興味がある方ではないと思っていたのですが、他のどの詩人たちよりも詩に対するぴーんと張り詰めたものが伝わってきて、詩への純粋な感覚や感情が呼び覚まされるものがありました。吉増さんのような詩人が存在することは、本当はかなりありがたいことなのだと、改めて思いました。
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by hannah5 | 2015-11-06 13:11 | 詩のイベント | Comments(0)

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