「言葉の旅・詩の岸部へ」-石田瑞穂×佐峰存×岡本啓   


少し前になりますが、石田瑞穂さんと佐峰存さん、岡本啓さんによるトークと朗読の会がありました(11/27、場所は本屋B&B)。これは石田瑞穂さんの詩集 『耳の笹舟』 と佐峰存さんの詩集 『対岸へと』 の刊行を記念して行われたもので、岡本啓さんはゲストとして招かれました。

3人は今旬の若手の詩人たちです。そして3人ともアメリカ滞在/在住という共通した経験をもっているので、このイベントはとても楽しみにしていました。トークは石田さんが進行役を務め、2人から話を引き出すものでしたが、比率からいくと、岡本さんの話が少なめだったのがちょっと残念でしたが、3人の話はユニークで面白かったです。欲を言えば、海外滞在/在住による内側の変化や異文化と自分との齟齬、異文化の中での、あるいは日本に帰ってきてからの行き場のなさやそれらによる言葉の変化などがもう少し聞きたかったと思いました。

朗読された詩はお互いに好きな詩を選び合うというもので、石田瑞穂さんは「雪風」(岡本さん選択)、佐峰さんは「指に念じる」(石田さん選択)、岡本さんは「ペットボトル」(佐峰さん選択)を朗読しました。ここでは石田瑞穂さんの「雪風」を引用させていただきます。


雪風

   石田瑞穂


目をつむるみたいに
耳もつむれればいいのに

最初は雪のせいかと思った
あたりが急にしんとしだして

冬鳥 銀狐のトロット 明けの星の瞬き
物音がまったくとどかなくなった

窓の外 夢幻の園から舞い降りる
小鳥の和毛のような雪の純白が

世界中の音という音を吸い取ってしまったのか
そう錯聴した

静か というのとも成り立ちがちがう
耳のなかがどこまでいってもまっ白で

耳朶を両手でおおっても
白さの度合いはますます濃くなってゆく

裸麦の海面をざわめかせ
コガラたちの弾丸が飛び立っても

グレイッシュな世界のなかで
鉄と水と音だけが凍りついていた

新聞と詩のなかでは株価のそよ風次第で
子どもたちが住む家をなくし爆弾が落されるのに
そうか 言葉は魂だけじゃなく
耳まで傷つけていたのか

こころをつむるように
耳も莟をつむるのか

ながい夜汽車の旅もおわりかけた
朝焼けの午前五時だというのに

前の席では東南アジア系のふたりの若い僧侶が
ささやくように手話をかわしている

それは 聴いたこともない響き
草や花や星が空へたちふるえているような

さらさらした途切れのないふしぎな言語
皮膚のしたの国境線から吹雪いてきた

どこにもない国語
水に消える水に 形を変えた 雪風

              (詩集 『耳の笹舟』 より)



b0000924_4223315.jpg
佐峰存さん(左)、石田瑞穂さん(右)



b0000924_4242195.jpg
岡本啓さん






【出演者プロフィール】

石田 瑞穂(いしだ みずほ)
1973年生れ。1999年、第37回現代詩手帖賞受賞。詩集に 『片鱗篇』 (2006)、『まどろみの島』 (2012)(H氏賞)、『耳の笹舟』 (2015)。2013年から2014年にかけて、現代詩手帖新人投稿欄選者を担当。

佐峰 存(さみね ぞん)
日本生れ。大学卒業までの13年間をアメリカで過ごす。現代詩手帖投稿欄を経て、2015年、第一詩集 『対岸へと』 上梓。喜和堂や現代詩の会に参加のほか、ウェブサイト「詩客」で詩や評論を執筆している。

岡本 啓(おかもと けい)
1983年生れ。ワシントンDCに滞在中に現代詩手帖へ毎月一篇ずつ投稿した詩で、2014年、第52回現代詩手帖賞受賞。帰国後、投稿詩をまとめ、第一詩集 『グラフィティ』 上梓。2015年、同詩集にて第20回中原中也賞、第65回H氏賞受賞。

(会場で配布された資料よりコピー抜粋)
[PR]

by hannah5 | 2015-12-04 23:19 | 詩のイベント | Comments(0)

<< 譚詩舎文学サロン~新しい詩への... 日本の詩を読む IX ~ 詩的... >>