日本の詩を読む X ~ 四季派の時代(第3回)   


「四季派の時代」の3回目は「三好達治~ 『測量船』 以後」と題し、『測量船』以後に出された三好達治の詩集の中から特に 『何窗集』、『閒花集』、『山果集』、『霾』、『艸千里』 を中心に講義が行われました(5/30)。また、四季派について論じた吉本隆明の「「四季」派の本質-三好達治を中心に」(「文学」(1958.4)も併せて取り上げられました。(吉本隆明は初期の頃、四季派、特に立原道造から影響を受けたそうですが、興味深いエピソードです。)読んだ作品は 『何窗集』 から「鴉」、「首途」、「展墓」、「路上」、「服喪」、『閒花集』 から「揚げ雲雀」と「ある写真に」、『山果集』 から「燈下」、「一枝の梅」、「日まはり」、『霾』 から「大阿蘇」、『艸千里』 から「涙」、「艸千里浜」、「あられふりける」、「おんたまを故山に迎ふ」、「列外馬」でした。






静な村の街道を 筧が横に超えてゐる
それに一羽の鴉がとまつて 木洩れ陽の中に
空を仰ぎ 地を眺め 私がその下を通るとき
ある微妙な均衡の上に 翼を戢(おさ)めて 秤(はかり)のやうに揺れてゐた




友を喪ふ 四章

  首途

真夜中に 格納庫を出た飛行船は
ひとしきり咳をして 薔薇の花ほど血を吐いて
梶井君 君はそのまま昇天した
友よ ああ暫らくのお別れだ…… おつつけ僕から訪ねよう!


  展墓

梶井君 今僕のかうして窓から眺めてゐる 病院の庭に
山羊の親仔が鳴いてゐる 新緑の梢を雲が飛びすぎる
その樹立の向うに 籠の雲雀が歌つてゐる
僕は考へる ここを退院したなら 君の墓に詣らうと


  路上

巻いた楽譜を手にもつて 君は丘から降りてきた 歌ひながら
村から僕は帰つてきた 洋杖(ステッキ)を振りながら
……ある雲は夕焼のして春の畠
それはそのまま 思ひ出のやうなひと時を 遠くに富士が見えてゐた


  服喪

啼きながら鴉がすぎる いま春の日の真昼どき
僕の心は喪服を着て 窓に凭れる 友よ
友よ 空に消えた鴉の声 木の間を歩む少女らの
日向に光る黒髪の 悲しや 悲しや あはれ命あるこのひと時を 僕は見る

(三好達治詩集 『何窗集』 より)




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by hannah5 | 2016-06-09 17:20 | 詩のイベント | Comments(0)

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