日本の詩を読む X ~ 四季派の時代(第5回)   


「四季派の時代」の5回目は立原道造が詩集を刊行し始めた頃の23歳までを中心に講義が行われました(6/20)。この23歳までの時期は、堀辰雄と出会ったことにより 『四季』 の同人となって詩人としての活動場所を得たことや、立て続けに2冊の詩集 『萱草に寄す』、『暁と夕の詩』 を刊行したこと、さらに東大の建築科に入学し、小住宅の設計で3年連続して辰野賞を受賞するなど、詩人としても建築家としても将来に向かって大きな礎を築いた時期でした。教室では 『萱草に寄す』 から「はじめてのものに」、「またある夜に」、「晩き日の夕べに」、「わかれる昼に」、「のちのおもひに」、野村喜和夫さんが「近未来近代」に発表された「ヒヤシンスハウスまで アリュージョン立原道造」と「のちのおもひに パラフレーズ立原道造」、吉本隆明の道造論「固有時との対話」(一部)を読みました。

立原道造は高村光太郎と並んで、若い頃、大人の人生が今まさに始まろうとしていた時期に私がもっとも強く影響を受けた詩人です。教室で道造の詩を読みながら、あの頃の孤独や痛み、哀しみやある運命的な出会いなどが一気に甦ってきて、心臓がどきどきしっぱなしでした。




のちのおもひに


夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午さがりの林道を

うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
――そして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた…..

夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには

夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう




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by hannah5 | 2016-06-28 20:56 | 詩のイベント | Comments(0)

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