詩に出会う(3)   


冬の朝

         平田詩織


(泣いているの?)

もうだれのことも信じない
強く放つ横顔は
うすくとがって、きれいだ
光に殴られたように放心して
いつまでもみとれていたいほどの

真新しい暦のうえに
目覚めて見る夢
ひとは生まれたばかりで
まだ立つこともままならないのに
手を取りあって踊ろうとする
足の下の暗い域から
いっせいに湧きあがる耳を濡らす
潰えた身体に降るいたわりの雨音

青白い冬の路上に伏しても
まなざしを引き剥がすことはできない
脱力するばかりの空を抱きとめる
つめたい腕に思いを残す
ここにある
やわらかな不在を信じてほしい
目の奥に宿るもののために踊る手足を

(2017年1月11日(水)朝日新聞夕刊「あるきだす言葉たち」に掲載)



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ひと言

一人の人を好きになる瞬間は本能的なもので、その人の多くを知らなくてもすべてを包括してしまうような、遠い昔から知っているような匂いを嗅ぐ。自分の核と相手の核が融合し、宇宙にまで広がる精神的身体的空間において、無限の自由と真の幸福とを同時に享受する。一つの詩に出会うのは恋に陥る瞬間に似ている。平田詩織さんの作品を読んだことはない。でもそれは大きな問題ではない。私にとってここにある言葉がすべてであり、その中で魂の奥底から開花するほどの歓喜に満たされているのだから。「2015年11月の第一詩集 『歌う人』 (思潮社)で歴程新鋭賞。「一本の白羽の矢のように私たちの始原を刺し貫いた」と評価された。」(朝日新聞より)




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by hannah5 | 2017-02-04 21:01 | 詩に出会う | Comments(0)

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