私の好きな詩・言葉(59) 「MAGIC」 (江國香織)   


私は
あなたのために
香りをえらぶ
MAGIC
という名のボディローションを
あなたの指や
唇の
這う場所にたくさん
すべりこませておく
あなたの体温でたちのぼるように
私たちの
甘い
時間のために
記憶のために
いくつもの
秘密のために
匂い、のこるかな

あなたが気にしても
それは
あなたの問題です


(江國香織詩集 『すみれの花の砂糖づけ』 より)




解説

みずみずしさと女らしさと傷つきやすさと感じ取った痛みをどこにも置くことのできないあやうさとを、江國香織の作品から感じる。友達にすれば面白いかもしれない。けれど、一緒に暮らすとなると可愛いけれどしんどいだろうなあと思った。そうして、忘れられなくなる人だ。

詩集 『すみれの花の砂糖づけ』 を読んでいて感じたことは

不埒で
いきがよくて
感性たっぷりの詩

ということだった。これは、エッセイなどの彼女の他の作品を読んでも変わらない。

江國香織は、井上荒野の言葉を借りれば、「行間の作家」なのだそうだ。「彼女の文章が行間を示唆するのではなく、「行間」と呼ぶしかないものをすくいとるのが彼女の作品の特質であるように思う。たとえば、幸福と不幸の間。愛と憎しみの間。一人と二人の間。そこに見えてくるものがあるとしたら何だろうか。それは「孤独」であると私は思う。億万通りの物語の存在の可能性の中の、たった一人の自分という孤独。」( 『いくつもの週末』 解説より)けれど、結果は決して悲観的ではない。結婚から得たひとつの理解を江國香織はこう書いている。「穏やかで愛のある結婚生活を送るためには、捨て身で無理をとおさなくてはいけない。」いい言葉だなと思う。


江國香織(えくに かおり)

1964年東京に生まれる。
作家。
87年「草乃丞の話」で小さな童話大賞を、89年「409 ラドクリフ」でフェミナ賞受賞。
小説に 『つめたいよるに』 『こうばしい日々』 (産経児童出版文化賞、坪田譲治文学賞) 『きらきらひかる』 (紫式部文学賞) 『ホリー・ガーデン』 『流しのしたの骨』 『ぼくの小鳥ちゃん』 (路傍の石文学賞) 『すいかの匂い』 『神様のボート』、エッセイに 『都の子』 『泣かない子供』 『絵本を抱えて部屋のすみへ』 『いくつもの週末』 などがある。
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by hannah5 | 2005-11-13 19:37 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(8)

Commented by thatness at 2005-11-13 23:45
この詩集、ぼくも気に入っています。
自分のことろで書こうとかんがえてましたが、先を越されました...笑。
Commented by hannah5 at 2005-11-13 23:51
*thatness さん、あまり気にもとめてなかったのですが、
読んでみたらなかなかいいですね。
さすが文学賞取るだけの感性をもっていると思いました。
Commented by aki at 2005-11-14 07:20 x
 例の詩集ですね。私も土曜日に、ユニーの本屋で手に取りました。(ローカル…笑)  
Commented by hannah5 at 2005-11-14 14:54
*aki さん、はい^^
Commented by BlueInTheFace at 2005-11-14 17:51
江國香織、結構好きなんです。
「一緒に暮らすとなると可愛いけれどしんどいだろうなあと思った。」
うんうん、分かるような気がする。
この詩にも、静かな狂気のようなものが見え隠れしていますからね。
Commented by hannah5 at 2005-11-14 22:40
*ミツさん、おひさしぶりです。
静かな狂気、ですか。。。
そうかもね。。。
Commented by フレーバー at 2006-05-27 18:48 x
MAGIC
という名のボディローション

この詩に魅了されて、私はMAGICを探しています。
実際にあるのでしょうか。
私もお気に入りのボディーローション。見つけたいです。
Commented by hannah5 at 2006-05-27 22:54
*フレーバーさん、はじめまして。
MAGICが見つかったら教えてくださいね。

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