私の好きな詩・言葉(72) 「心よ」他 (八木 重吉)   


心よ

こころよ
では いっておいで

しかし
また もどっておいでね

やっぱり
ここが いいのだに

こころよ
では 行っておいで


ひびくたましい

ことさら
かつぜんとして 秋がゆうぐれをひろげるころ
たましいは 街をひたはしりにはしりぬいて
西へ 西へと うちひびいてゆく


聖書

この聖書(よいほん)のことばを
うちがわからみいりたいものだ
ひとつひとつのことばを
わたしのからだの手や足や
鼻は耳やそして眼のようにかんじたいものだ
ことばのうちがわへはいりこみたい


ゆるし

神のごとくゆるしたい
ひとが投ぐるにくしみをむねにあたため
花のようになったらば神のまえにささげたい


キリスト

病気して
いろいろ自分の体が不安でたまらなくなると
どうしても怖ろしくて寝つかれない
しかししまいに
キリストが枕元にたって
じっと私をみていて下さるとおもうたので
やっと落ち付いて眠りについた


ねがい

きれいな気持ちでいよう
花のような気持ちでいよう
報いをもとめまい
いちばんうつくしくなっていよう


信仰

人が何と言ってもかまわぬ
どの本に何と書いてあってもかまわぬ
聖書にどう書いてあってさえもかまわぬ
自分はもっと上をつかもう
信仰以外から信仰を解くまい




天というのは
あたまのうえの
みえる あれだ
神さまが
おいでなさるなら あすこだ
ほかにはいない


再び来る

彼は言った
自分は再び此の世へ来ると
私は基督より正直な者があるとは思えない
私は彼が再び来ることを信ずる




解説

詩人、八木重吉は明治31年(1898年)、農家の三男二女の次男として東京に生まれた。
大正6年(1917年)、東京高等師範学校に入学した。同級生のクリスチャン吉田不二雄と親しくなり、小石川福音教会のバイブルクラスに出席するようになる。新約聖書をギリシャ語で読み、内村鑑三の著作に心を強く動かされて熱心なクリスチャンになった。
大正10年(1921年)、東京高等師範学校文化第三部(英文科)を卒業。友人の紹介によって女子聖学院高女部三年編入試験の準備をしていた島田とみに、英語と数学を教えるようになる。この頃、詩と信仰合一の生活にいそしむようになった。
大正11年(1922年)、7月、島田とみと結婚。重吉は24歳、とみは17歳だった。
大正12年(1923年)、長女桃子誕生。
大正14年(1925年)、1月、長男陽二誕生。4月、千葉県東葛飾中学校の英語教諭に任ぜられた。8月、第一詩集 『秋の瞳』 を出版した。
大正15年・昭和元年(1926年)、3月、肺結核のため発熱し、療養生活に入った。
昭和2年(1927年)、病状は悪化を続け、10月、逝去。享年29歳。

詩集: 『貧しき信徒』 『秋の瞳』 『神を呼ぼう』 『花と空と祈り』 『八木重吉詩集』

(集英社『日本の詩・八木重吉』より抜粋・要約)
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by hannah5 | 2006-05-15 01:32 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(8)

Commented by 銀河ステーション at 2006-05-15 07:52 x
「うちがわからよみいりたい」…深い言葉たちですね。
29歳で亡くなったとは。
名前は知っていましたが、ほとんど読んだことはありませんでした。でも、とても純粋な心を感じます。よい詩を紹介していただいてありがとうございます。
今度、図書館で探してみよう。
Commented by hannah5 at 2006-05-16 01:04
*銀河ステーションさん、どういたしまして。
八木重吉はあまり長い詩は書かなかったようです。
その代わり、短くて美しい言葉をたくさん残しました。
昔は総じて早熟だったようですが、それにしても29歳で亡くなったとはね。
もっと長生きしていたら、もっと成熟した詩を残していたに違いないと思います。
大抵の図書館には八木重吉の詩集は置いてあると思いますので、
機会があったらぜひ読んでみてください。
Commented by saidenryu at 2006-05-17 23:25
こんばんは、
八木重吉さんの詩は以前、ホームページ「つれづれの文庫」で
少し読みました。
とても美しい言葉の詩の連続で、
   私はめまいを感じてしまいます、
      すごいなあと思います。
Commented by hannah5 at 2006-05-19 01:34
*saidenryu さん、八木重吉の詩はどれも短いですが、
本当に美しいですよね。
美しい言葉というのは美しい心から出てきますね。
Commented by pink at 2006-07-28 01:13 x
一番最初のこころ・・・・なんだか響きました。
だって、心って自分のものなのに、自分のものじゃないみたいに
一人歩きするから。
でも、また戻ってくるのがわかる。信じられる。
それが生きる強さかな。
Commented by hannah5 at 2006-07-29 00:00
*pink さん、はじめまして。
一人歩きしますね、心って。
八木重吉の詩は短いけれど、心に沁みる言葉が多いように思います。
Commented at 2011-06-18 08:20 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by hannah5 at 2011-06-18 14:06
鍵様、コメントありがとうございました。
現在、ミニストリーの方は母の介護があり、お休みしていますが、一つだけFull Life Study Bible という英語の聖書の注解書の翻訳をしています。(以前は大学生伝道をしていました。)
詩よりもそちらの方が専門になりますが、詩は書き始めてから7年目になります。

あまりキリスト教関係は大々的には書きませんが、たまに活動の様子など書くこともありますので、よかったらまた遊びにいらしてください。

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