私の好きな詩・言葉(73) 「朝の図書館」 (雨音さん)   


人影まばらな
朝の図書館

本の匂い
斜めに入ってくる
朝の光

私の心は
一歩踏み出すごとに
静まっていく

読み終えた本を
カウンターに戻すと
本を入れてきた
大きな布の袋は
空っぽになる

ぶらぶらと
棚の間を歩きながら
目に留まった
本を抜き出して
ぱらぱらとめくる

さらりと読み流した文字が
教えてくれる
本の風合いを感じながら
一冊
また一冊
腕に抱えて
本を選んでいく

本のことだけを
考えている
そんな時間

空っぽだった
大きな袋が
またいっぱいになって
ずっしりと重く

ふと思う

こんな風に
続いていくのかもしれないと

失ったものを
元に戻して
この心を同じ形に
修復することは
決してできないとしても

こうして
何かを探して
埋めようとせずには
いられない
手探りの
ただの勘だけで

それでも
そうして埋め続けていたら
空洞になってしまうことはない
涙さえもなくなることなんて
きっとないから

大事に大事に抱える
私自身の
そんな想いを

そして
肩に重みを感じながら
私は歩き出す

少しだけ
歩みを緩めて

空を見上げながら


( 『ネットの中の詩人たち 4』 の中から)




解説

雨音(あまね)さんとは 『ネットの中の詩人たち 4』 を通して、また MY DEAR を通して出会いました。スズランのように可憐で、静かな森の中の草や木に降りている露のようにはかなげで優しく透き通るような詩を書く方です。最近、静岡県詩人協会の会員にもなられました。(おめでとう、雨音さん!)雨音さん、これからも美しい言葉を綴ってくださいね。(雨音さんのHP: しずくのうた

「どこまでもぬける空に届きそうもなくて、膝を抱えて蹲っていても、俯いた視線の先に触れる小さな花の静けさがあります。
読んでくださった方へ、そしていつも見守ってくださる方へ、言い尽くせないほどに感謝しています。いつまでもこうして心を描き続けられればと思っています。」( 『ネットの中の詩人たち 4』 雨音さんの言葉より)
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by hannah5 | 2006-05-21 01:17 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(10)

Commented by saidenryu at 2006-05-21 22:46
あれ、これって自分と似ている、と思ってしまいました。
図書館に良く行くので・・・。
時々、雨音さんのHPに行ってみようと思います。
はんなさんの詩人の解説は新鮮で面白いです。
Commented by greenmoon9 at 2006-05-22 00:22
優しく 透き通ってますね♪本当に。。。
繊細っていう木から沢山の枝が出てるみたいです。
(かなり繊細っていうのを言いたかったんです・笑)

自分には無理ですが。。。(笑)

それにしても、この詩もさることながら、
この詩を受け取れるはんなさんも、
さすが、、、ですね。。。^^
Commented by hannah5 at 2006-05-22 00:34
*saidenryu さん、ありがとうございます。
雨音さんのHPは静かな感じがして、なかなかいいですよ。
ぜひいらしてみてください。
Commented by hannah5 at 2006-05-22 00:39
*greenmoon さん、優しく透きとおった感じでしょう?
greenmoon さんも繊細な感性を受け取ってらっしゃいますね^^
それもさすがです^^
Commented by 雨音 at 2006-05-22 08:05 x
hannaさん、ありがとうございます。
それから、読んでくださったsaidenryuさん、greenmoonさん、ありがとうございます。
私のHPは知る人ぞ知る、こっそりしたものですので、どうぞお時間のあるときにのんびりしにいらしてくださいね。

この詩は確かmydearの掲示板で秀作を戴いて、その後、少しだけ改稿したものです。このくらいの長さのものだと(私にとっては一番長いもののうちに入ります)書きながらの推敲には限界があって、掲示板に出すまでにも細かい推敲を長く続けるんですが(言葉のニュアンスとか、足りなさとか無駄とか、何度も読んで足し引きします。寝かせるかんじ?)それでもやっぱり直すところがでてきます...まだまだ修行中の身です。とほほ。

それではまた。本当にありがとうございました。
Commented by hannah5 at 2006-05-22 22:29
*雨音さん、やっぱり秀作を取った作品だったのですね^^
『ネットの中の詩人たち4』 を読んだ時、比較的印象の強い作品でしたよ。
私の詩も雨音さんのように寝かせるといいのかもしれませんね

こちらこそ、詩を貸していただいて、ありがとうございました。
Commented by nagiwo at 2006-05-25 20:38
図書館という空間、とっても好きです。
雨の日も晴れの日も、それぞれの匂いがするようで。

そこにたどり着くまで重くて面倒だった袋が、
本を返して空っぽになると途端に手持ち無沙汰というか、
妙に寂しいようなあの感じ、そういうのも好きです。
Commented by hannah5 at 2006-05-25 23:44
*ナギヲさん、雨音さんの詩とナギヲさんのコメントが対をなしていて、
書き手と読み手のキャッチボールみたいでとてもいい感じです。
ナギヲさんのコメントって、ナギヲさんの写真みたいにすてき^^
Commented by 雨音 at 2006-05-27 06:58 x
早起き村に住んでいる私は土曜日でも起こされます(笑)
nagiwoさんのお写真をこっそり拝見してきました。
素敵ですね。またこっそりひっそり楽しませていただきます。

図書館もそうなのですが、このとき、連作にしていた美術館の詩があって、
どちらの場所も、建物の感じがとてもすきなのです。
光の差し方だと思うのですが、建築士さんにお会いしたいとおもったほど。
あの光を掬い取りたいという気持ちが書かせるんだろうなと思っています。
Commented by hannah5 at 2006-05-27 22:51
*雨音さん、土曜日に7時前に起きるなんて、私には考えられないです(笑)
ナギヲさんのブログは落ちついた大人の雰囲気があって、素敵ですよ。
良い材料やテーマに出逢うと嬉しくなりますね。

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