私の好きな詩・言葉(11) 「黒の少女」   

十代の若い感性の詩に出会いました。

早熟と大人になりきれない葛藤と痛みが、鋭利な感性とともに言葉になって表れる時、非凡な才能を感じます。「黒の少女」は映画の一こまのような素敵な詩です。(ハッカ飴

黒の少女

寒くなってきましたね
やっと衣替えがなされるころに
僕は帰りの電車のなかで
黒い黒いセーターを着た女の子を見ました

長くて真っ黒なストレートの髪をしていて
服の袖からすらりと長く、棒のように伸びた腕と
小枝のように細い5つの指は
カタカタ、カタカタ
空を引っ掻いてパントマイムを繰り返す

弾いていたのはドビュッシーのアラベスク第一章でした
さざなみのように広がったメロディは
長い長い髪を 吹くはずのない風になびかせながら
細長い腕で 小刻みに呼吸しながら
虚空の鍵盤を、強く打っていた
一瞬、僕に気が付いたようでした

伏目がちに視線を戻した彼女は
足早に黒のブーツを動かしホームへ降りて
人のごみと夜の闇に飲みこまれていきました

「黒のカラスが空を飛ぶなら、黒のわたしは地を這うわ」
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by hannah5 | 2004-10-19 17:47 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(2)

Commented by tomus70 at 2004-10-20 08:52
おはよう。

アメリカン・テイストの詩ですね。
Commented by hannah5 at 2004-10-20 14:07
*tomus70さん、そうですね。
そんなところはあるかもしれませんね。

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