私の好きな詩・言葉(99) 『くしゃみ』 (巻 ひかり)   


青空の高さが倍になる朝に
きりりと白いシャツを着てみる


窓際に坐ったひとの横顔のシルエットを見る国語の授業


母校からトランペットの応援歌聞こえる窓に顎乗せている


「泣かないで」とか
「泣いたっていいよ」とか
歌はすぐ簡単にそう言う


鎖骨まで伸ばした髪を結ぶとき
夏風の手がうなじに触れる


太陽と
サッカーボールと
砂埃
生まれ変わったら男になろう


昼休み、背景となる黒板に
サインコサインサインコサイン・・・・・


塩焼きのサンマを食べる
その箸で味わってみる
サンマのこころ


真夜中に携帯電話を握りしめ
受信のライトよ 光れ 光れ


口の中転がす梅の飴玉がカラカラと鳴る
夕暮れの時


真夜中のメールで
友をすぐそばに感じて
遠くに思ったりもする


光年という語を口にするときに遠くを見つめた理科の先生


本当の意味も分からず
「切ない」と
英語のように口にしてみる



(巻ひかり歌集 『くしゃみ』 より)





ひと言

この歌集を出した時、巻ひかりさんは青山学院高等学部の3年生、17歳だった。『くしゃみ』 は詩学3月号で若い歌人の歌集として紹介されていて、何気なく読んでいるうちにとても気になった歌集だ。

  青空の高さが倍になる朝に
  きりりと白いシャツを着てみる

ふむ。。。

  塩焼きのサンマを食べる
  その箸で味わってみる
  サンマのこころ

うん、そうだよね。。。

  太陽と
  サッカーボールと
  砂埃
  生まれ変わったら男になろう

きゃは~、やったね!^^

かくして、この歌集をすぐにゲット。若い感性などという陳腐なことは言いたくない。身の回りの事象に心が生き生きと反応している。そして、それを言葉に掬い取っている。それが私の心にストンストンと落ちてくる。つまり、とてもおいしいのだ。

普通「歌集」というと装丁も立派で、いかにも歌集然としているが、『くしゃみ』は小さく薄くて、どのページにもかわいいイラストがついている。ハイソックスでミニスカートで、いろんなものをぶら下げた携帯を握りしめて、友達とおしゃべりしている高校生の姿が目に浮かぶ。

言葉はこんなふうに編むのがいい。そう思った一冊である。


巻 ひかり(まき ひかり)

1988年、東京都生まれ。
2004年、青山学院高等学部入学。2年生の時に短歌の創作を始める。
第20回全国高等学校文芸コンクール短歌部門優良賞を受賞。
第21回全国高等学校文芸コンクールで、短歌部門最優秀賞、小説部門優秀賞・読売新聞社賞を受賞。
巻ひかりさんは今春、大学生になる。
(『くしゃみ』 よりコピー抜粋)
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by hannah5 | 2007-03-06 23:39 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(2)

Commented by halfmoon81 at 2007-03-07 08:24
如何お過ごしですか。 コメントは久しぶりです!

>若い感性などという陳腐なことは言いたくない
この詩を読んで、若さっていいなぁ、と思いました(笑)
春休みに一時帰国したら、この歌集を買ってみたいと思います。
私は海外で日本語教育に携わっていますが、テストに出る文学作品や詩の古いこと、、、海外生活の長い中高生に、「まだあげ初めし前髪の、」と言ったところでまず日本語の意味がわからないのですから。
国語と日本語は違うというのが、現場でないと分からないんでしょうね。

↓の詩、とっても好きです。ツボにはまりました!

Commented by hannah5 at 2007-03-08 01:58
☆halfmoon さん、こんばんは。
おひさしぶりです。
ハイ、若さっていいですね(笑)
海外生活の長い中高生じゃなくても、最近の子は藤村の詩はわからないかもしれませんね。
でも、大人だってわからないかもしれないと思います。

halfmoon さんは日本語を教えていらしたのですね。
どうりで詩に詳しくていらっしゃると思いました。
こういう歌集なら、若い人たちでもとっつきやすいでしょうね。
私でもとびつきましたから(笑)

詩、ツボにはまってよかったです(笑)
ありがとうございます。

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