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花売る人に   


ねえ
あなたがそんなふうに
痛々しく
針の先のように
幸せと哀しみの間を揺れているから
わたしは
行かないで
って、あなたの手を握っている

行かないで

たとえ、それがあなたのすべてであったとしても
もう少し ここに居て
優しい花たちが
ゆっくりとあなたを包んでくれるのを
わたしはずっと想っている

ねえ
わたしは
あなたが売っている花たちを知らない
あなたが綺麗な顔をして
どんな花を
だれにあげたのかも知らない

けれど
そんなふうに花を差し出されて
あなたから花を買った人たちは
たぶん
幾ばくかの幸せを
哀しみの向こうに
受け取ったのではないかしら

今朝
あなたは
どんなふうに目覚めたのだろうか
小さな欠伸があなたを捉えて
哀しみより少しだけ
陽射しの中に佇んでいることが
できたのだろうか

わたしは
もしかしたら
あなたに親切ではないかもしれないね
なぜなら
あなたから花を買ったら
たぶん、泣いてしまうだろうから

by hannah5 | 2007-03-19 22:55 | 作品(2004-2008)

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