私の好きな詩・言葉(12) 「朝」   

私が最初に谷川俊太郎に出会ったのは、ピーナッツ(スヌーピー)の翻訳を通してでした。原文の雰囲気に近い日本語訳、しかもその日本語は原文のもつ微妙なペーソスを原文以上に伝えてくれる。そんな訳にすっかり魅せられ、ピーナッツの漫画本を何冊も収集しました。

谷川俊太郎が詩人だと知ったのはだいぶあとになってからです。ピーナッツの翻訳は詩の延長線上なんだと思いました。

「朝」は、たまたま昨日立ち寄った本屋さんで出会った詩です。こんなふうに朝を詩にできたらいいだろうなと思いました。



朝のベッドで寝息をたてているのは誰?
よく知っている人なのに
まるで見たこともない人のようだ

夢のみぎわで出会ったのはべつの人
かすかな不安とともにその人の手をとった
でも眠りの中に鎧戸(よろいど)ごしの朝陽が射してきて

朝は夜の土の上に咲く束の間の花
朝は夜の秘密の小函(こばこ)を開くきらめく鍵
それとも朝は夜を隠すもうひとりの私?

始まろうとする一日を
異国の街の地図のように思い描き
波立つ敷布の海から私はよみがえる

いれたてのコーヒーの香りが
どんな聖賢(せいけん)の言葉にもまして
私たちをはげましてくれる朝

ヴィヴァルディは中空に調和の幻想を画き
遠い朝露に始まる水は蛇口からほとばしり
新しいタオルは幼い日の母の肌ざわり

インクの匂う新聞の見出しに
変らぬ人間のむごさを読みとるとしても
朝はいま一行の詩

(谷川俊太郎、詩集「朝」より)
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by hannah5 | 2004-10-24 15:55 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(4)

Commented by tomus70 at 2004-10-24 22:48
こんばんは。
高校時代を思い出します。現代詩手帖を崇めていました。
アンドレ・ブルトンやジョルジュ・バタイユにひかれました。
谷川さんの詩も、飯島耕一の詩も、吉岡実の詩も大好きでした。

ここにくると懐かしい香りにひたれます。

ところで、先日igossomamaさんにお願いした同じことをお願いしに参りました。
僕はまぐまぐから<金曜日の怪談>というメルマガを隔週発刊しています。
その中に、「エキサイトな清少納言たち」という女性ブロガーの特集をやっています。来る29日号にご紹介させていただけないでしょうか?
紹介文は僕が書いて事前に見てもらいます。

条件は、女性であること。

お返事はお早めに僕のブログまで。
お待ちしております。
なお、BNは、まぐまぐ検索にかけて引いて下さい。
Commented by dahlia_xx at 2004-10-24 22:50
谷川俊太郎の詩は予備校の課題にも出されたりします。
イメージ構想表現という受験内容に即したものとして、です。
高村光太郎よりも谷川俊太郎のほうが生徒もイメージしやすいようですよ。
谷川作品のすっと寄り添うような雰囲気が好きです。
Commented by hannah5 at 2004-10-25 17:46
*tomus70さん、お好きな詩が紹介できて嬉しく思います。
これからもいろいろな詩人の方達の詩を自分なりに読んで、ご紹介できたらと思っています。

私のご紹介、感謝いたします。
tomus70さんのブログに伺いますね。
Commented by hannah5 at 2004-10-25 17:54
*だりあさん、谷川俊太郎、人気がありますね。
高村光太郎は時代が古いのと、孤高の芸術家ということでとっつきにくいと思う人もあるのかもしれませんね。
あと、弱々しくないので、自分には光太郎のように偉くなれないと言う人もあるようです。

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