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物差し   


私の中の物差しが
見えたり見えなくなったりする。

物差しはある時は明瞭に見え
私の背丈と寸分違わぬ長さを持ち
私の時間の連続と同じように流れ
きっちりと物差しの役目を果たしてくれる。

しかし、ある時は、物差しは忽然と姿を消し
物差しがあった痕跡すら残さないことがある。
それはちょうど、砂の中に刺さっていた杭を引き抜くと
その後には杭の形がそのまま穴になってぽっかりとあくが
雨が降り、風が吹き
年月が経つうちに穴の形がすっかり消えて
杭が刺さっていたことすら想像できなくなることに似ている。

物差しがはっきり見えている間は
世界は均衡を保ち
規則正しくリズムを刻み
人々の話し声や笑い声が健康的に響いてくる。

しかし、物差しが見えなくなる時
世界は底なしの混沌と化し
人々の話し声や笑い声が嘲笑と批判に変わり
入り口と出口の区別さえつかなくなる。
そして、踏みしめても踏ん張りがきかず
時間が眉間に皺を寄せるようになる。

物差しが隠れてしまうことがしばらく続いた。
しかし、ここしばらくは物差しを見失わずにすんでいるようだ。
少なくとも、固い地面を踏みしめることができる。
物差しが見えているうちに
物差しの長さを測り、書き留めておこうと思う。
将来もしまた物差しが見えなくなった時
書き留めた物差しの記録を引っ張り出せば
物差しが存在していたことを確認することができるだろうから。


(6/2 全体的に訂正しました)

by hannah5 | 2007-06-01 23:23 | 作品(2004-2008)

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