季節がわたしを振り返る   


陽はすでに明るくなっているのに
風が冷たい
季節はまだ幼くて
コートの襟を立てて歩く
凍みるような風が
わたしの体の中を通り抜けていく

ピンクや黄色やオレンジが陽射しの中で
匂い立ち始めた花屋の店先
薄桃色の霞がこぼれ落ちる
オレンジがパッチリと開いて
まあるいつぼみが上を見上げている

心の裡であたためていた想いは
誰にも届けられず
長い冬の中で封印したまま
けれど、想いは消えることはなく
陰影のある明滅を繰り返しながら
眠り続けた

それはふとしたきっかけだった

誰からも忘れられていた頃
季節が小さな寝返りを打った
空気が静かに余韻を鳴らすと
誰彼となく胸の奥が騒ぎ立ち
お互いの眼の底を覗き込んだ

うん?
うん
そう?
そう

揺れている空気を感じて
あちらこちらで頭が頷き合った
確かにあの向こうに
細波(さざなみ)を送り出す源がある

淡々(あわあわ)とした光の中を歩く

冬の中で眠っていた想いが
目覚め始めて
ゆっくりと伸びをした
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by hannah5 | 2007-07-26 23:49 | 作品(2004-2008)

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