日中現代詩シンポジウム   


12月1日(土)、2日(日)、第一線で活躍する日本と中国の現代詩人たちが「いま詩に何ができるか」をテーマに徹底討論するシンポジウムが行われる。今日はその第一日目で、東京芸術大学と早稲田大学で公開分科会・朗読会が行われた。私は早稲田大学の方に参加した。(思潮社・中坤パミール文学工作室共催)

プログラムの冒頭にシンポジウムの趣旨が書かれている。
  「中国の中坤パミール文学工作室と思潮社の共催する「第二回日中現代詩シンポジウム」を、昨年11月北京での第一回につづき、東京にて開催いたします。
  日本と中国の現代詩人が民間でおこなう初めての高レベルの交流として、それぞれ第一線で活躍する詩人たち8名ずつが参加しておこなわれた第一回シンポジウムは、ほぼ10時間にわたる少人数での徹底した話し合いを中心に、日本文化交流協会の会長でもある辻井喬氏が、これほど一切のタブーを解除して本音の部分で語り合えた機会はなかった、と感嘆したほど実質的なものとなりました。ここで掘り下げられた日中の言語表現の差異と共通性の検討は、そのままこれまでの西欧中心の文化潮流を問い直すものでもあり、その意味でこのシンポジウムじたいが、現在の両国の詩人たちに共通する危機意識から生まれた時代的必然と言えるように思います。
  その第一回をふまえて、第二回は「いま詩になにができるか」という総合テーマのもと、「伝統/モダニズム」「アジア/ヨーロッパ」「私/他者」「社会/読者」という4つのテーマを話し合いたいと思います。70年代末の文化大革命終焉まで30年に及ぶ文学的空白のあと、さまざまな文化の流入をすさまじい速度で受け入れ、いまも変容の只中にある中国詩人たち。情報言語に覆われる社会のなかで、詩のあり方そのものを問われる日本詩人たち。第一回で切実なテーマとして提起された問題をさらに深めてゆくことによって、直接話し合いに参加した詩人だけでなく、広く読者のあいだで、詩を糸口に新しい文化のあり方について考え合う契機が生れることを期待したいと思います。」

中国の現代詩人をほとんど知らなかったが、会場で見た中国の詩人たちからは繊細だが力強い印象を受けた。ともすると、日本の現代詩人の詩は現実離れしていて、精神性ばかりを追求するあまりどこか脆弱な勘が拭えないが、中国の詩人たちの詩は現実の生活や歴史や中国の大地から響いてくる骨太な印象を受けた。その中から于堅(ユー・ジャエン)さんと翟永明(チャイ・ヨンミン)さんの詩をご紹介したいと思う。



「長い旅の途上」      于 堅


長い旅の途上
いつも丘や荒野に
ともしびの現われるのが見える
時にはちらっと過ぎり
時にはいつまでも後から付いてくる
情愛のこもった眼差しのように
林を通り抜け池を跳び越え
突然、また丘の向こうに現れる
それらの黄色い小さな星は
闇夜の大地を
暖かくて親しみのあるものに見せる
私は車を止めて
心からそれらを追いかけて行きたい
どのともしびも私の運命を変えると
私は信じている
その後の人生は
すっかり別の風景だ
しかし  私はこれらのともしびを遠くに見るだけ
暗い大地を
ちらっと過ぎり  ちらっと過ぎってゆく
黙して言葉なく  私たちの車は飛ぶように走る
真っ暗な車内
私の隣で熟睡する人がいる
                    (田原訳)




「軽傷の人、重傷の都市」     翟 永明


軽傷の人がやってきた
白いガーゼは彼らの顔のようだ
彼らの傷跡は戦争の傷跡よりうまく縫えている
軽傷の人がやってきた
大切なものを担いで
息絶えていない部分が
軍服を脱いで 全身を洗う
小切手とクレジットカードを使う

重傷の都市は血の気でごった返している
脈拍と体温が上がったり落ちたりしている
戦争より速く
恐怖より遅く
重傷の都市は
松葉杖と包帯を投げ捨てた
今都市はすでに緑の分泌物を流し出し
石材の万能の能力を提供している
一人の軽傷の人が
その美学的建築を見上げている

六千個の爆弾が落ちてきて
燃える兵器庫を残した
六千個の爆弾の落ちた穴は
まるで六千個の重傷の目だ
慌ただしく 映し出すのは
数千の夫のいる女や
妻のいる男や 未婚の男女の顔
彼らは体中硫黄やアスファルトにまみれ
足元には取り壊された鉄の骨組みがある

軽傷の人は これから
一冊の重傷の地図を持って
手分けして新しい食器のようなビルを探す
皿のような薄い形
軽い形 尖った形
この街の頭は
今鋭利な刃先のようにいくつも上に伸び
空は容易に切り裂かれ
そのたくさんの傷口に驚いて後退っている
                       二〇〇〇年伯林にて
                            (徳弘康代訳)



そして、もちろん吉増剛造さん、北川透さん、野村喜和夫さん、水無田気流さんたちの詩も刺激的でよかったことは言うまでもない。明日の公開シンポジウムは学士会館で行われる。引き続き楽しみである。


*スケジュール

公開分科会・朗読会
12月1日(土)   14.00~
参加費 500円(資料代)
会場I  東京芸術大学音楽学部5号棟109教室  14.00~
出演   駱英、唐暁渡、欧陽江河、陣東東、高橋睦郎、佐々木幹朗、井坂洋子、
      平田俊子
会場II  早稲田大学 本部キャンパス14号館102教室  14.40~
出演   于堅、楊煉、西川、翟永明、吉増剛造、北川透、野村喜和夫、水無田気流

公開シンポジウム
12月2日(日)  14.00~(17.30~懇親会)
参加費 2000円(資料代込み)(今日もらったプログラムを持っていくと1000円)
      懇親会 5000円
会場  学士会館
出演  駱英、唐暁渡、于堅、楊煉、西川、翟永明、欧陽江河、陣東東、辻井喬、大岡信、
     吉増剛造、北川透、高橋睦郎、佐々木幹朗、平田俊子、野村喜和夫、水無田気流

日中現代詩シンポジウム
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by hannah5 | 2007-12-01 23:42 | 詩のイベント | Comments(0)

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