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切れ切れに   


ゆらゆらと揺らめく湯気の中に
思いのかけらや
出来事の断片や
流れていく時間の切れ端を放り込んでおくと
それらが不思議な陰影で
ひとつ
またひとつと
浮き上がってくる

表面に浮き上がったそれらは
光を受けて
ちろちろと小さな反射光を発している
それらを繋ぐものも
繋ごうとする意思もないのだが
均衡を保って
しばらく行儀よく浮かんでいたあと
湯気の向こうへゆっくりと消えていった


湯気が少し冷めたころ
取り残した切れ切れを放り込む
一瞬、反射光が驚いたように踊った

切り傷を作らなかった日のやわらかなきらめき
作り笑いしながら
他の事を考えていた薄茶色の苦み
深呼吸を幾度もしたのに
なぜだか取り残されてばかりいた


湯気が冷たくなった


消えそこなった幾切れかが
湯気の底に沈殿している

by hannah5 | 2008-01-08 23:53 | 作品(2004-2008)

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