La Voix des poètes (詩人の聲) ~ 野村喜和夫さんの朗読会   


7月8日(火)午後6時半から野村喜和夫さんの朗読会がありました(天童大人氏プロデュース)。会場となったギャラリー絵無はJR新宿駅中央東口を出て、ハンバーガーショップや居酒屋、食べ物屋などが建ち並ぶ賑やかな繁華街を5分ほど歩いた所にありました。少し遅れて着くと、静かな照明のもと、野村喜和夫さんがすでに朗読を始められていました。30人ほどの聴衆のほとんどが目をつぶって朗読に聴き入っていました。それはちょうどギャラリー全体に野村喜和夫の宇宙が広がり、一人一人が野村さんの言葉が放射される中、自由に遊泳しているようでした。

野村喜和夫さんの詩はともすると言葉の難解さと複雑さにからめ取られてしまい、詩の森の中で道に迷い込むような感じがありますが、今回、野村さん自らが自分の詩についていろいろお話され-フランスの詩の話であったり、古事記の話であったり-その奥行きの深さと広がりにあらためて圧倒されると同時に、野村さんの言葉から発せられるオーラのような美しさに陶酔するような思いでした。

今回の朗読は詩集『草すなわちポエジー』からでした。詩集の帯に前田英樹氏の照会文が書いてあります。一部引用します。「野村喜和夫の『草すなわちポエジー』には、現代日本語と呼び習わされているものを、いかに詩の不断の起源に置き直すか、という問題についての膨大な考察がある。言うまでもなく、<日本語>によっていま詩を書くことは、そのことを措いてほかにはないのだが、その考察が、詩を書く行為に固有の展開によって、限りなく研ぎ澄まされていく例は、稀有なものである。さらに、野村喜和夫の探求は、たんにこの例に属するだけではなく、<日本語>が言語として包含し、内在させる最も深い創生の力を、社会科したあらゆる意味の錯綜の奥から一気に露出させてくれる。このとき、詩(ポエジー)は、「苔」に顕われ、「泥」に顕れ、「分岐」や「肉」や「結合」に顕われる。こうした顕われがたがいに持つ異質性のなかに、この詩集の唯一の秩序ないしは実在的な形式が産み落とされている。」

夕べはいい夜でした。



「淡島」――――――――次に淡島を生みき。こも亦、子の例には入れざりき。(『古事記』)

――ポエジーの浮く十五章


1(苔)

 淡島とは、名づけえないものの転記のひとつにすぎないが、転記されたその事実性において還元不可能となる。淡島を見出せ、あなたの横、あなたの背後、あるいはあなたを無へと繋ぐあなた自身の視床の苔(ポエジー)のうえに。


2(泥)

淡島ゆき機械状、
そうなのだ、
まだ見ぬ海をテクストに、
復唱のしじまのひだを漂ったこともある私だけれど、
時空はいま、
柔らかな轟音とともにあり、
冷たい鋼の匂いを撒きながら滑り込んできた淡島ゆき機械状も、
こころなしかうきうきと身を揺らしているようにさえ、
みえた、
行く手にはまだ開かれたばかりの隊道があり、
その生まれたてのへこみや突起を、
めくれる泥(ポエジー)のコーパスを、
まさぐるように進む心地よさが保証されているせいなのか、
私も乗り込み、
視床も揺れたから、


8(肉)

 淡島とは、時間のもうひとつの側、すでに断たれてはいるが、未知への遡及的な跛行のなかで不意にあなたに寄り添うかもしれない側のことである。積乱の秩序、オオナムジの領域。転記された肉(ポエジー)はそこで、肉(ポエジー)の記憶していないこと(積乱の秩序、オオナムジの領域)を踊るのだ。


                                   (『草すなわちポエジー』より)



(すべてをコピーすると膨大になるので、15章の中の1、2、8章のみここに掲載しました。残りは詩集『草すなわちポエジー』をご覧ください。尚、1章と8章は本の中では短い配列になっていますが、フォントの関係上、本と同じ体裁にはできませんでしたのでご了承ください。)






野村 喜和夫(のむら きわお)

1951年10月20日、埼玉県生まれ。早大文学部卒。
詩集 ―― 『川萎え』(1987)『わがリゾート』(1989)『反復彷徨』(1992)『特製のない陽のもとに』(1993)
評論 ―― 『ランボー・横断する詩学』(1993)『散文センター』(1996)
翻訳 ―― 『海外詩文庫・ヴェルレーヌ詩集』(1995)など
CD ―― 『UTUTU-独歩住居跡の方へ』(1996)
参加イベント――「00コラボレーション・詩と美術」(1993)、「オト・コト・コトバ」(1994)、「詩の外出――21世紀へ、身体/映像/音楽とともに」(1995)
参加詩誌 ―― 「詩的現代」「00」「歴提」など。
                         (『現代詩文庫 野村喜和夫詩集』より)

野村喜和夫さんのHP: poesie
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by hannah5 | 2008-07-09 23:10 | 詩のイベント | Comments(2)

Commented by _kyo_kyo at 2008-07-11 19:09
暑中お見舞い申し上げます。

毎日暑いですね!
今日はちょっと過ごしやすかったですが、
そちらは如何ですか?

太陽に負けない様に、
お互い頑張りましょうね~~^^
Commented by hannah5 at 2008-07-12 12:13
♯kyo kyoさん、書中お見舞い申し上げます。
ホント、暑いですね。
今日は日本全国暑いようですね。
こちらは午前11時で34度だとか、ニュースで言ってました。
夏は弱いので、また避難場所を求めて移動します(笑)

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