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わたし暮(ぐ)らし   


考える
ということの重さを脱いで
胸の下あたりをひんやりと感じてみる

考える
ということの中には
大小とりどりの不安があり恐怖があり束縛があり無理があり
抹消神経が凍りつき
胸の中をしくしくとした痛みが走る

けれど
胸の下あたりのひんやりとした部分には
ささやかなわたしの息遣いが棲んでいる

そこは
きょうもあしたもあさっても
その先ずっと“今”という時間が続いていくところ
その時間に名前をつけたり
体裁を整えなくてもよい
だれにも叱られず
だれとも比較されず
ゆっくりと休みながら息を整え
空気のゆるやかなところを掬い
今日のお天気具合を占えばよいところだ

考える
ということの中で
わたしの声色を真似た
わたしそっくりの生き物が
次々と生まれては死んでゆく

胸の下のひんやりとした部分では
生まれては死んでいった生き物のことを
懐かしむことも思うこともなく
(もしかしたら、その生き物のことは知らないかもしれない)
やさしいムースのような暮らしをしている

by hannah5 | 2008-07-24 23:26 | 作品(2004-2008)

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