『マナーモード』葛原りょう×中園直樹【作家と詩人による朗読会】   


詩誌の投稿者の中で私が名前を記憶している人はそれほど多くはない。ある時、某詩誌で「葛原りょう」という名前を目にして、どこかで見たことがあるような気がした。それは妙に印象のある名前だった。それから何ヶ月かしたある日、偶然にもりょうさんが私のmixiに足跡を残された。RYOという名前をたどっていくと、長い前髪をたらしてマントのような物をかぶった姿の写真が現われた。その時私はどういうわけか、この人は詩を書いたり朗読したりすることを趣味にしている中年のオジサンだと思ったのだ。 mixi に足跡が残っていても、お礼をしたりメッセージを送ったりすることはほとんどない。でも、RYOさんの場合はちょっと気になって、じっくりmixi を眺めさせていただいた。mixi にリンクしてあるりょうさんのHPを読むうちに、なんと詩を書く若い人であることがわかった。しかも詩だけではなくて、短歌や俳句も書き、詩の朗読を頻繁にされているらしい人であることがわかってきた。メールで少しお話をし、りょうさんが出られるという朗読会に行くことにした。


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7月26日(土)午後6時から、文芸社の地下1階サロンで、詩人の葛原りょうさんと作家の中園直樹さんの2人による朗読会がありました。名づけて 『マナーモード』。葛原りょうさんと中園直樹さんがそれぞれの作品を朗読し、合い間に津軽三味線奏者の山本竹勇(ちくゆ)さんが加わって3人でセッションをするというとてもユニークな朗読会でした。なぜ「マナーモード」かというと、朗読会のチラシにはこう書いてあります。「生きるために必要な「真実」や「魂の叫び」を描く中園や葛原の作品は、純粋なエンターテインメント作品と違いなかなか広まり辛い。しかし、現代に生きる若者達が本当に必要としているのは、中園や葛原の言霊。既に多くの魂を震わせている。しかし、必要としている読み手が他人に触れられたくない傷を持つ場合も多いという性質上、届いたとしても「一人ひっそり大切に」となる場合が多い。つまり、着信音を周りにまで響かせることを避けるような読者が多い。発信者側からの意味だけではなく、着信側にもそういう意味がある。朗読会「マナーモード」は、そういったことを必要としている人々のために、本だけではなく空気と鼓膜と魂を震わせる「二人の生きた声」と伝え、二人の存在そして作品の存在を広めようという試みである。」( 『マナーモード』 チラシより)

どうしようもなく生(なま)な生き方。むき出しになったいのちがこすれて、それをどうすることもできずにいる自分とひたすら歩くしかない-心の内を天に向かって噴き出すようにして語るりょうさんの朗読を聴きながら、そんなことを思っていました。私にははっきりといじめられたという経験はありませんでしたが、生きることそのものが砂をつかむように空しく痛かった時期がありました。風の彼方に追いやってしまったはずのその日々が昨夜ふたたび私の目の前に蘇ったようで、孤独の日々を言葉に現わすことすらできなかった私は、多くの傷を受けながらも言葉を見つけていくことができたりょうさんの資質と感性に羨ましさを覚えると同時に、その強さに圧倒されるような思いでした。

人の痛みを理解することは、同じ痛みの経験者でない限り、本当にはできないことです。親や大人たちが私の痛みを理解することができなかったように、私には私が経験していない痛みを持つりょうさんや中園さんや、その他多くの若者達の苦しみを本当に理解することはおそらくできないだろうと思います。

孤独を言葉で表現することがどうしてもできなかった私は見えない出口を求めて探し回り、最終的に出会ったのは私の孤独と痛みを理解してくれるイエス・キリストでした。その出会いを通して、人の孤独や痛みはたとえ理解できなくてもじっと感じることはできる、祈ることはできる、そこにある痛みの壮絶さや孤独の暗闇に圧倒されながらも、一人じゃないからね、と静かに抱きしめていることはできるということでした。

「生きていてほしい」-声を振り絞りながら何度も何度も語っていたりょうさんの思いは、必ず受け取ってくれる人たちがいるだろうし、その思いはたとえ着信がむずかしくてもきっとどこかへ届くだろうと思います。




灰色の家路


小さな子供は石を蹴る
口々無心に石を蹴る
何も考えずに 何も思わずに
楽しくもなく つまらなくもなく
冷たく、鈍く、黒光る
足もとの小石だけをみつめて
この子は小石と話してる
この子の眼の云うことにゃ
人間社会がいやになりまして
あなたと遊んでいたいのです
ぼくの本当の友達は
蹴られても何も云わないあなただけ
聞こえるともなくため息が一つ
ランドセルがカタカタ鳴っている
小石もカタカタ転がりまして
わきのドブ川にポチャ
家路が灰色一色に染まりました

               (葛原りょう詩集 『魂の場所』 栞解説文より)






葛原 りょう (くずはら りょう)

1978 東京生まれ
1992 不登校となり、障害者施設に通い、ボランティア活動を開始する
1996 武者小路実篤の考えに共感し、農業高校を中退し、毛路山町の「新しき村」に入
     村し、2年半の間、農作業と詩作をしながら過ごす。機関誌『新しき村』に詩を発
     表。
1998 アルバイトをしながら詩作に専念。朗読活動など展開中。
2004 第4回「詩と創造」奨励賞受賞。
2005 詩集 『朝のワーク』
2007 詩選集 『原爆詩人181人集』 に参加。詩集『魂の場所』
詩誌「三等星」などを経て詩人会議 詩誌「衣」同人
詩誌「COAL SACK」に参加。
                          ( 『魂の居場所』 よりコピー抜粋)

りょうさんのHP: 丘のうえ工房「ムジカ」
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by hannah5 | 2008-07-27 23:10 | 詩のイベント | Comments(4)

Commented by 俊樹 at 2010-07-18 00:09 x
おひさしぶりです。
りょうさんの立ち上げた文藝誌に参加しませんか?
Commented by hannah5 at 2010-07-18 17:40
神部さん、お久しぶりです。
すでに他の文芸誌と同人誌に参加しているので、今のところ他に参加する気持ちはありません。
お誘いありがとうございました。
Commented by 俊樹 at 2010-07-18 18:36 x
頑張っていますね。
僕も離婚してから入院もせず、元気です。
葛原さんの「ムジカ」は出版社ですので、気が向いたら来て下さいね。
Commented by hannah5 at 2010-07-18 23:46
神部さん、がんばってくださいね。
出版社は今どこもなかなか売れなくて苦労が多いようですが、葛原さんの「ムジカ」が上手く軌道に乗ることをお祈りしています。

あやこさん、よかったですね。
個展を開いたりしてがんばってらしたから。
詩画集が出たら、神部さんのブログでお知らせくださいね。

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