葛原りょうさんの詩の朗読ライブ   


12月6日(土)午後6時半から、新宿区中井のPAPAGENO(パパゲーノ)というアートスタジオで葛原りょうさんの詩の朗読ライブがありました。江藤善章さんのパンフルートと川瀬由紀子さんのピアノ、畠中裕美さんによる前衛舞踏の組み合わせによるライブでした。クラシックのピアノ伴奏と澄んだ音色のパンフルートの演奏を背景に、また詩の魂を象徴するかのような前衛舞踏が添えられて、味わい深い朗読会となりました。前回のマナーモードでは帽子とブーツ、りょうさんの伸ばした髪が印象的でしたが、今回はもうすぐ就職することもあるせいか、紺のスーツに赤いネクタイ、白のシャツというかっこうで、ちょっと意表をつかれました。

黒い画用紙に白いペンで書いた詩を時には一語一語抑えるように、時には激しく泣くように読み、読み終わるたびに1枚ずつフロアーに落としていきました。それはまるで枯れ葉が散っていくような感じでした。

透き通るようなパンフルートやクラシックのピアノが詩の朗読をうまく引き立てて、とても楽しめた朗読会でした。朗読を聴いているうちに、涙が溢れてきて止まらなかった詩がありました。(この作品は近々復刻出版される『朝のワーク』に入るそうです。)


告白


なんど、サヨナラをつぶやいたことか
それでも 生きなければならないだなんて
どうして決めつけなければ いけないのか
あなたの かなしい 瞳だけが
そんな甘ったれた私を 貫いて・・・・・

遺書のつもりで書いた手紙を
皆さんに出し兼ねて
抽斗のなか しまっていたら
すっかり忘れていたっけな
忘れて笑って思い起こせば
「忘却はなぐさめだ」なんて
だれかが言って
それから私は駄目になったのだと
だれかに言われて・・・・・

小さいころから 何かが違っていたと
思い込んでいた・・・・・
違っていた! これが私の第二の誕生だった
以来、私の心に タンタウロスが、
プロメーテウスが 息づいて
コトバに イカルスの翼生やして

私はオリンポスにたてついた!
けれど、現実には そんなオリンポス
どこにも 無かったのだと
気づいた時には遅かった

ゲンジツは 嵐のようだった
満員電車にしりごみして
リアルな乗客の視線だけが
私を致死量に追い込んだのだ

詩を 書いているということは
不幸なことなのだろうか
幸せなことなのだろうか
詩が 流れ出てしまうということは
けっきょく
改めなきゃらなんことが 多すぎるということだ

こんなにダラダラ書いてきて
ダラダラ生きてきたっけな
どこかで人生〆ようものにも
下手くそだから 下手に 生きる

二十一世紀になったよ
十二月九日 雪が降ったよ
クリスマスが楽しみだ
お正月が楽しみだ
そんな呟きだけでも
十分な彩りに 成り得るんだ

成り得るんだ
みんなみんな成り得るんだ
どうして日々をたやすく
捨てることができるのだろう
不幸な顔もせず ましてや
幸福な顔も ニンゲンの顔も
私は絶えて 見たことが ない

ヘルマン・ヘッセに憧れた
武者小路が好きだった
世界中の人間が
どうか この二人を知っていますようにと
願わずには いられなかった

徹底的に生きるんだ
だれも文句の言えないように
徹底的に愛するんだ
だれも嫌いと言わせないように

もう一つ欲を言えば
恥ずかしげもなく空の青さに
いつも感動できる人間で
ありたいものと思うのだ

二十四年の告白は
こうして 終わる・・・・・
二00ニ年の初雪が
私の汚れた原稿のうえに 降り
乱れた髪を 優しく 諭し・・・・・

手をふって
明日会おうと約束しよう
そんな時にサヨナラは言わないで
けっして私のようには言わないで

私は たぶん しゃべり過ぎたんだ
もうすこし黙っていれば
理解はきちんと 得られた筈だ
挨拶の 過剰が
こんなに 孤独へ 追いやられるとは
思っても みなかった

でも 私は 恐れなかった
古くなったヒューマニズムも
新しい欲望の暴力も
ぜんぶ 試してやったつもりだ

今こそ 私は 私の顔を
やっと 前に向けて
誇ることさえ できるのだと
明日を期待することさえ
ためらうことなく できるのだと・・・・・

やがて春がきて また夏がきて
秋がきて もう一度冬がきて
変わらない笑顔を
変わらないあなたたちに
ためらわず 向けることを

そうしたら

私のつまずいてきた小石も
いちいち 蹴っ飛ばさずにすむんだ
そのままのあなたたちと
そのままの世界の上で
そのままの私で
そのままの微笑みで

燃えるような瞳でみた
桜の丘の多摩川の夕暮れ
ハドソン河に照りつけた
マンハッタンの朝焼け
忘れない風景へ
私は 歩いてゆける

じゃ、また 会いましょう
できればすぐに(二〇〇二年のうちに)
また、ワガママなようだけど
今度みんなで ジングルベルを聴きに行こうね
今度みんなで 除夜の鐘聴きに行こうね







葛原 りょう (くずはら りょう)

1978 東京生まれ
1992 不登校となり、障害者施設に通い、ボランティア活動を開始する
1996 武者小路実篤の考えに共感し、農業高校を中退し、毛路山町の「新しき村」に入  
     村し、二年半の間、農作業と詩作をしながら過ごす。機関誌『新しき村』に詩を発
     表。
1998 アルバイトをしながら詩作に専念。朗読活動など展開中。
2004 第4回「詩と創造」奨励賞受賞。
2005 詩集『朝のワーク』
2007 詩選集『原爆詩人181人集』に参加。詩集『魂の場所』

詩誌「三等星」などを経て詩人会議 詩誌「衣」同人
詩誌「COAL SACK」に参加。
              (『魂の居場所』よりコピー抜粋)

葛原りょうさんのHP: 丘のうえ工房「ムジカ」

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by hannah5 | 2008-12-07 01:56 | 詩のイベント | Comments(0)

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