2007年 07月 28日 ( 2 )   

鰯の缶詰工場   


鰯と鰯が鰯の間に押されて
ぎゅうぎゅう
鰯くさい息を吹きかけ
鰯の眼をして
鰯のまんまで
疲れた顔で垂直に並ぶ

鰯と鰯が鰯の上に重なり
ぎゅうぎゅう
鰯くさい汗をかいて
鰯の膚いろ
鰯の奥まで
疲れた体を押し込み押し込む

鰯と鰯が鰯の隙間に挟まり
ぎゅうぎゅう
鰯の気持ちになって
鰯の顔をして
鰯になったよ
ぎゅうぎゅう ぎゅうぎゅう

真夜中の電車は
鰯の缶詰工場
吊革に古ぼけた顔がぶらさがり
ぎゅうづめの鰯たちが整然と並ぶ
孤独な鰯たちの奇妙に孤独でない時間が
今夜もまたひと時ある
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by hannah5 | 2007-07-28 23:56 | 作品(2004-2008)

新しい歴史が始まる   


脳髄が麻痺するほど酔いつぶれる時
新しい歴史が始まる

たかだか二十センチ四方の球体の中で
日夜休むことなく活動し
展開している森羅万象の観測と発見
そこから引き出される考察と結論
微小な世界の一個体の出来事が
球体の周辺に留まることをよしとせず
一個体を抜け出し
一都市を通過し
一国家を超え
あらゆる国へと波及していく

月へ行く宇宙飛行船に
球体を積み込んで飛び出していく日も近い
月に到達した球体はやがて
宇宙に連々と浮かんでいる星々に信号を送るだろう

脳髄が酔いつぶれて壊れてしまわないように
球体をよく鍛えておくがよい

地球が混沌としていることに気をとられているうちに
顕微鏡でも認識できないほどの微細な変化が
一夜のうちに世界の歴史を塗り替えるだろうから
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by hannah5 | 2007-07-28 02:02 | 作品(2004-2008)