カテゴリ:作品(2004-2008)
食後のデザート
震えている
悪い癖
散 る
在り処
旋 律
生きていることと死んでいることの境目で
入 眠
空の破片
空をこぼしてしまわないように
2008年 12月 26日
ポテトあじ蟹あじごはんあじ肉あじ玉ねぎあじデミグラソースあじ塩あじごはんあじ小松菜あじアブラあじきのこあじごはんあじポテトあじぽてとあじ保天戸あじポテットあじ
圧縮する口蓋の先につづく脳の片隅で
あじというあじを抽出している最中に
同じ脳のあらぬ方角で
隔離されたコトバが他人顔して
ふつりと動きはじめる
ほんの少しの第一歩は意外と客観的で
-それでもわたしはどきどきしてしまうのだけれど
両者の間にはちょっとした隔たりがあり
その相関関係を
いつまでも交わらない平行線のように想っている
胃が目覚めていて
指が目覚めていて
どちらも単独行動をとることが好きで
そのくせかなり寂しがりやだから
どちらかに決めることは寂しい気持ちを助長するだけだ
コーヒーあじで最後を締めくくった
そのあとは
すっかり目覚めて元気になった指が
活発に活動を展開している
▲ by hannah5 | 2008-12-26 23:48 | 作品(2004-2008)
2008年 12月 22日
一人でいることが
かぎりなく押し寄せてくる
暗く広がっている空気の中に
風が乾いて通りすぎる
震えるような押し問答があり
やがて空気がギザギザに開いた
空の片隅が
昼間はあたたかったことを思い出している
笑い声や話し声や
いくつもの声たちが
ふいに空気の中に浮かびあがる
声たちはやがて
一つの塊になっておちていった
ひっそりと静かになった
あとには
落ちつきをなくした空間が広がっている
きのうまでの不安が
ギザギザの間にこびりついている
一人でいることを落ちつかせようと
しわを伸ばして
空気の中に貼りつけてみる
かすかな思いやりが
にじみだしてくる
▲ by hannah5 | 2008-12-22 23:29 | 作品(2004-2008)
2008年 12月 17日
急激に下降していく波に乗り切れず
ぼんやりとしたまま岸辺に立ち続ける
幾日
幾月
幾年
無数に散乱する時間の欠片をかき集め
山のように積みあげる
無表情な指先で
積みあげた時間の山を撫でつけ
いつか役に立つかもしれないと思いながら
それなのに
さらさらと指の間からこぼれ落ちていくこれらの欠片たちは
どこで拾ったもの?
一つのことが終わり
二つめが始まり
さらに三つめが流れこむ
いらだちと失望とやりきれなさの点在する時間を
上手に整理することができない
洗いすぎたジーンズみたいな気持を抱えて
もう一回洗濯してみる?
と訊いてくるのは
最近の時間の悪い癖だ
そろそろそんなことを忘れて
一つくらい
手のひらに残しておきたいのだけれど
▲ by hannah5 | 2008-12-17 23:34 | 作品(2004-2008)
2008年 12月 11日
サラダのように
イチョウやモミジやサクラやカキやウメや
降る
振る
フル
風がこぼしていく葉っぱのあとを
追いかけて
拾いあつめて
またこぼす
忘れ去る
いのちのつながりを
とめどもなく
▲ by hannah5 | 2008-12-11 13:04 | 作品(2004-2008)
2008年 12月 07日
生きることは悲しいですか
生きることはつらいですか
生きることは嬉しいですか
生きることは楽しいですか
生きることは苦しいですか
生きることは幸せですか
生きることは失うことですか
生きることは拾うことですか
生きることは泣くことですか
生きることは痛いですか
生きることは笑うことですか
生きることに
すっぽりと収まりきらず
寸法の合わない痛みを脱いでみたり
着てみたり
私のことを忘れないでください
私のことを忘れてください
私のことを愛してください
私のことを嫌わないでください
私のことを放っておいてください
私はうまく起きられませんから
期待してもらっても困るのです
そのどれもが正解で
どれもが当たっていない
生きていることの
私の在り処
※葛原りょうさんの朗読会にて
▲ by hannah5 | 2008-12-07 02:04 | 作品(2004-2008)
2008年 11月 21日
気の遠くなるような空気の中で
ピンと張りつめたソルべをかじる
奥歯が刺激されて冷えた空気が下りてくる
浅くなっていた息に
整理された安堵感が送りこまれる
蟻塚にずるずると足が吸い込まれていくように
体じゅうから力が抜けていく
どこからともなく切ない懐かしさが湧きだしてきて
どんよりとした空気を攪拌する
どこかにわたしがいたような気がするが
いつのまにか空気は灰色になり
やがて鉛色に変わり
わたしの姿は見えなくなった
目の前に覚めたコーヒーがあったことを思い出す
しきりと手を伸ばすが
コーヒーまでの距離は遠くて手が届かない
ここまで来るのに
永遠にも等しい時間が費やされた
見分けがつかないほど小さく切断された時間を
一欠けらでもなくしてしまわないように拾い集め
わたしの中へ放りこんでいく
努めて平静を装い
時折余裕さえ見せながら
そうしておくことが義務であり
責任であるかのように
わたしの中の混沌とした時間が
ある日、平静さを失って波立ち泡を吹き
止めようがないほど揺れに揺れた
体じゅうの細胞が水分を失ってきしみ始めた日
あなたの哀しみを思って泣いた
※ 父が老健に入った日。
父は認知症が進み、一晩に十回から十五回もトイレに行くようになった。
その父につき合った時間。
▲ by hannah5 | 2008-11-21 23:01 | 作品(2004-2008)
2008年 11月 13日
(地下ではないけれど)
地面のいちばん深いところを
抉りながら這っていく
生きていることと死んでいることの境目で
きょう在ることを見る
― 生きることはこんなことか
― 死ぬこともこんなことか
こらちとあらちは蝶つがいでつながっていて
ぎいっとあければ
一瞬のうちに
こちらからあちらへ移ることができる
そういえば
あちらへ移る前に
それまで集めてきたあらゆるものを
捨てなければならない
思い入れと思い込みのたくさん詰まったかばんをあけて
冷たくなり始めた空気の中に
ひとつずつ捨てていく
集めてきたものはたくさんありすぎて
捨てては拾い
拾っては捨て
また拾う
― じょうずに捨てられない・・・・・
積みあげられた時間の中から
人が一人ずつ去っていく
ぽつんと残った影がひとつ
その上に腰をおろして
いつまでも決められないでいる
「そろそろ明日になるから決めてください!」
ぴしりと叱る声がしてカツが入れられたのに
相変わらず眉根を寄せて
捨てたり拾ったりしている
― どうしてだかわからないのです
― わたしにはどうすることもできないのです
▲ by hannah5 | 2008-11-13 23:40 | 作品(2004-2008)
2008年 11月 08日
傾きかけている記憶の隅に
わずかな光を見つけて
坐る
さざめくように流れている風が
小さな光の群れを
ちろちろと揺らしていると
あたりがしだいに薄らいでくる
耳鳴りのように聴こえていたざわめきが
ひとつずつ音を消しはじめる
小さな痛みが呼ばれ
浮きあがり
散っていく
遠すぎて届かないものたちが
永遠に姿を消そうとしている
たましいが落ちていく
無音のいちばんふかいところに
綿のようにふかぶかと
▲ by hannah5 | 2008-11-08 01:18 | 作品(2004-2008)
2008年 11月 04日
おおぞらの
広いところを見上げていたら
空が粉々に砕けて
散ってしまいそうになった
あわてて息をひそめた
肩で息をしながら歩いているうちに
空がこわれやすくなっていたことに
気がつかなかったのだ
パリリン!
と空が砕けて
破片がきらきらと光って
無数にわたしの上に降ってきた
すると
くしゃくしゃっと
紙くずを丸めるような音がした
それは
「胸の内」という所からだった
胸の内には
涙の材料がいろいろ詰まっていて
くしゃくしゃにされればされるほど
胸の内から
絞りとられるような嗚咽が漏れた
おおぞらが
両手を広げて泣いている
昔からずっとそうしてきたように
▲ by hannah5 | 2008-11-04 23:24 | 作品(2004-2008)
2008年 10月 31日
空をこぼしてしまわないように
見上げて
止める
藍いろが空一面に広がっていて
今にもこぼれそうだから
受け取らないように目を伏せる
大きな藍いろの片隅に
薄青い星がひとつぶ落ちていて
遠慮がちに小さくなっている
今にも消えそうだ
(いつかこの空にも)
(終わりがあるかもしれない)
細い枝の先に枯れ葉が
今にも切れそうにぶらさがっていて
藍いろが枯れ葉に引っかかっている
風に揺られれば
藍いろははがれて
するするとすべり落ちてしまうだろう
コンクリートのビルが
藍いろの中でシルエットをつくっている
包みこむように笑っている目の中で
ずっと遊んでいるつもりだった
終わりのことを考えるより
いつまでも甘えていたかったのだ
▲ by hannah5 | 2008-10-31 23:14 | 作品(2004-2008)