カテゴリ:作品(2004-2008)( 1331 )   

食後のデザート   


ポテトあじ蟹あじごはんあじ肉あじ玉ねぎあじデミグラソースあじ塩あじごはんあじ小松菜あじアブラあじきのこあじごはんあじポテトあじぽてとあじ保天戸あじポテットあじ

圧縮する口蓋の先につづく脳の片隅で
あじというあじを抽出している最中に
同じ脳のあらぬ方角で
隔離されたコトバが他人顔して
ふつりと動きはじめる
ほんの少しの第一歩は意外と客観的で
-それでもわたしはどきどきしてしまうのだけれど
両者の間にはちょっとした隔たりがあり
その相関関係を
いつまでも交わらない平行線のように想っている

胃が目覚めていて
指が目覚めていて
どちらも単独行動をとることが好きで
そのくせかなり寂しがりやだから
どちらかに決めることは寂しい気持ちを助長するだけだ

コーヒーあじで最後を締めくくった

そのあとは
すっかり目覚めて元気になった指が
活発に活動を展開している
[PR]

by hannah5 | 2008-12-26 23:48 | 作品(2004-2008)

震えている   


一人でいることが
かぎりなく押し寄せてくる

暗く広がっている空気の中に
風が乾いて通りすぎる
震えるような押し問答があり
やがて空気がギザギザに開いた

空の片隅が
昼間はあたたかったことを思い出している
笑い声や話し声や
いくつもの声たちが
ふいに空気の中に浮かびあがる
声たちはやがて
一つの塊になっておちていった

ひっそりと静かになった

あとには
落ちつきをなくした空間が広がっている
きのうまでの不安が
ギザギザの間にこびりついている

一人でいることを落ちつかせようと
しわを伸ばして
空気の中に貼りつけてみる

かすかな思いやりが
にじみだしてくる
[PR]

by hannah5 | 2008-12-22 23:29 | 作品(2004-2008)

悪い癖   


急激に下降していく波に乗り切れず
ぼんやりとしたまま岸辺に立ち続ける
幾日
幾月
幾年
無数に散乱する時間の欠片をかき集め
山のように積みあげる
無表情な指先で
積みあげた時間の山を撫でつけ
いつか役に立つかもしれないと思いながら

それなのに
さらさらと指の間からこぼれ落ちていくこれらの欠片たちは
どこで拾ったもの?

一つのことが終わり
二つめが始まり
さらに三つめが流れこむ
いらだちと失望とやりきれなさの点在する時間を
上手に整理することができない

洗いすぎたジーンズみたいな気持を抱えて
もう一回洗濯してみる?
と訊いてくるのは
最近の時間の悪い癖だ

そろそろそんなことを忘れて
一つくらい
手のひらに残しておきたいのだけれど
[PR]

by hannah5 | 2008-12-17 23:34 | 作品(2004-2008)

散 る   


サラダのように
イチョウやモミジやサクラやカキやウメや

降る
  振る
    フル

風がこぼしていく葉っぱのあとを
追いかけて
拾いあつめて
またこぼす

忘れ去る
いのちのつながりを
とめどもなく
[PR]

by hannah5 | 2008-12-11 13:04 | 作品(2004-2008)

在り処   


生きることは悲しいですか
生きることはつらいですか
生きることは嬉しいですか
生きることは楽しいですか
生きることは苦しいですか
生きることは幸せですか
生きることは失うことですか
生きることは拾うことですか
生きることは泣くことですか
生きることは痛いですか
生きることは笑うことですか

生きることに
すっぽりと収まりきらず
寸法の合わない痛みを脱いでみたり
着てみたり

私のことを忘れないでください
私のことを忘れてください
私のことを愛してください
私のことを嫌わないでください
私のことを放っておいてください

私はうまく起きられませんから
期待してもらっても困るのです

そのどれもが正解で
どれもが当たっていない

生きていることの
私の在り処



※葛原りょうさんの朗読会にて
[PR]

by hannah5 | 2008-12-07 02:04 | 作品(2004-2008)

旋 律   


気の遠くなるような空気の中で
ピンと張りつめたソルべをかじる
奥歯が刺激されて冷えた空気が下りてくる
浅くなっていた息に
整理された安堵感が送りこまれる
蟻塚にずるずると足が吸い込まれていくように
体じゅうから力が抜けていく
どこからともなく切ない懐かしさが湧きだしてきて
どんよりとした空気を攪拌する
どこかにわたしがいたような気がするが
いつのまにか空気は灰色になり
やがて鉛色に変わり
わたしの姿は見えなくなった
目の前に覚めたコーヒーがあったことを思い出す
しきりと手を伸ばすが
コーヒーまでの距離は遠くて手が届かない

ここまで来るのに
永遠にも等しい時間が費やされた
見分けがつかないほど小さく切断された時間を
一欠けらでもなくしてしまわないように拾い集め
わたしの中へ放りこんでいく
努めて平静を装い
時折余裕さえ見せながら
そうしておくことが義務であり
責任であるかのように

わたしの中の混沌とした時間が
ある日、平静さを失って波立ち泡を吹き
止めようがないほど揺れに揺れた
体じゅうの細胞が水分を失ってきしみ始めた日
あなたの哀しみを思って泣いた




※ 父が老健に入った日。
  父は認知症が進み、一晩に十回から十五回もトイレに行くようになった。
  その父につき合った時間。
[PR]

by hannah5 | 2008-11-21 23:01 | 作品(2004-2008)

生きていることと死んでいることの境目で   


(地下ではないけれど)
地面のいちばん深いところを
抉りながら這っていく

生きていることと死んでいることの境目で
きょう在ることを見る

― 生きることはこんなことか
― 死ぬこともこんなことか

こらちとあらちは蝶つがいでつながっていて
ぎいっとあければ
一瞬のうちに
こちらからあちらへ移ることができる

そういえば
あちらへ移る前に
それまで集めてきたあらゆるものを
捨てなければならない
思い入れと思い込みのたくさん詰まったかばんをあけて
冷たくなり始めた空気の中に
ひとつずつ捨てていく

集めてきたものはたくさんありすぎて
捨てては拾い
拾っては捨て
また拾う

― じょうずに捨てられない・・・・・

積みあげられた時間の中から
人が一人ずつ去っていく
ぽつんと残った影がひとつ
その上に腰をおろして
いつまでも決められないでいる

「そろそろ明日になるから決めてください!」
ぴしりと叱る声がしてカツが入れられたのに
相変わらず眉根を寄せて
捨てたり拾ったりしている

― どうしてだかわからないのです
― わたしにはどうすることもできないのです
[PR]

by hannah5 | 2008-11-13 23:40 | 作品(2004-2008)

入 眠   


傾きかけている記憶の隅に
わずかな光を見つけて
坐る
さざめくように流れている風が
小さな光の群れを
ちろちろと揺らしていると
あたりがしだいに薄らいでくる
耳鳴りのように聴こえていたざわめきが
ひとつずつ音を消しはじめる
小さな痛みが呼ばれ
浮きあがり
散っていく
遠すぎて届かないものたちが
永遠に姿を消そうとしている

たましいが落ちていく
無音のいちばんふかいところに
綿のようにふかぶかと
[PR]

by hannah5 | 2008-11-08 01:18 | 作品(2004-2008)

空の破片   


おおぞらの
広いところを見上げていたら
空が粉々に砕けて
散ってしまいそうになった

あわてて息をひそめた

肩で息をしながら歩いているうちに
空がこわれやすくなっていたことに
気がつかなかったのだ

パリリン!
と空が砕けて
破片がきらきらと光って
無数にわたしの上に降ってきた

すると
くしゃくしゃっと
紙くずを丸めるような音がした
それは
「胸の内」という所からだった

胸の内には
涙の材料がいろいろ詰まっていて
くしゃくしゃにされればされるほど
胸の内から
絞りとられるような嗚咽が漏れた

おおぞらが
両手を広げて泣いている
昔からずっとそうしてきたように
[PR]

by hannah5 | 2008-11-04 23:24 | 作品(2004-2008)

空をこぼしてしまわないように   


空をこぼしてしまわないように
見上げて
止める

藍いろが空一面に広がっていて
今にもこぼれそうだから
受け取らないように目を伏せる
大きな藍いろの片隅に
薄青い星がひとつぶ落ちていて
遠慮がちに小さくなっている
今にも消えそうだ


(いつかこの空にも)
(終わりがあるかもしれない)


細い枝の先に枯れ葉が
今にも切れそうにぶらさがっていて
藍いろが枯れ葉に引っかかっている
風に揺られれば
藍いろははがれて
するするとすべり落ちてしまうだろう

コンクリートのビルが
藍いろの中でシルエットをつくっている


包みこむように笑っている目の中で
ずっと遊んでいるつもりだった
終わりのことを考えるより
いつまでも甘えていたかったのだ
[PR]

by hannah5 | 2008-10-31 23:14 | 作品(2004-2008)