カテゴリ:投稿・同人誌など( 146 )   

波の間   


「元気にしてる?」
「うん、まあまあね」

あなたのまあまあねは
明るくなったりグレーになったり
振幅があるから
今日はどのあたりなんだろうかと考える
寂しいような情けないような顔が
ふと浮かんできて
今日のまあまあねは
濃いグレーかもしれない

十日ほど前、朝早く
ひりひりして目が覚めた
底の方に
唐辛子のあなたが沈んでいた

あの日の出発は
なんだか心細そうだったし
引きつったままの気持ちをさすりさすり
誰かに甘えることもなく出て行った

気にしてみても始まらない
何より、決めたのはあなた自身だから
そっとしてあるのだけれど

小舟よりもっと危うい
木の葉のような細々としたあなたの後ろ姿が
大海の波間に漂って揺れている

「平気だよ本当に」
「それならいいけど・・・」

波の間に
唐辛子がぽつんと浮かんだ
心配性だからねぇって
笑ったみぞおちのあたりが
まだゆらゆらしている
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by hannah5 | 2007-02-01 23:54 | 投稿・同人誌など

MY DEAR で秀作をいただきました。   


理数系はまったくダメだったのに、言葉に関しては底なしに何かが与えられているようです。(本当に数字とは相性が悪い。今でも計算は苦手で、数字を見ただけで脳が萎縮するのを感じます 笑)そして、小説やエッセイよりも詩 ―― 詩は生まれてからこのかた、私が出会ったものの中で一番相性のよいものです。だから、割合肩に力を入れずに書けます。その中で、自分の詩はどこへ向かっているのだろうということをよく考えますが、評価をいただくということは、どのように詩を書いていけばよいか方向性を与えてくれるものです。

3つの詩に秀作をいただきました。島さん、三浦さん、伊藤さん、いつも丁寧に評をくださり、感謝しています。これからもよろしくお願いします。(MY DEAR


1. 「美しく収穫をむかえたりんごがあった」
                 (2006年11月14日投稿)


美しく収穫をむかえたりんごがあった
丁寧にもぎ取られて
出荷用の箱に詰められた
形のいいりんごたちは
箱の中で誇らしげに光っていた

熟したりんごが山のように積まれていた
深い紅色がつややかに光っている
こしこし こすってかじった
甘酸っぱい汁がルビーのように
歯の間からこぼれた

りんごの芯をくり抜いて
焼きりんごを作った
バターとシナモンの香りが
りんごを包むように抱きしめた
心が躍った

それから。。。

形の不揃いなりんごが落ちた
ごろごろころがっている
あっちこっちぶつかってくぼんだ
切り傷ができた
誰にも見向きもされなかった

傷だらけのりんごを拾った
切り傷とくぼみでりんごは変形していた
どこから見ても美しいとはいえなかった
捨てようとした時
りんごの香りがほんのりとした

りんごの種を植えてみた
しばらくしたら小さな芽が出てきた
毎日 少しずつ大きくなった
水をやり 時々肥料もやった
りんごはどんどん大きくなった

いつか。。。

大きなりんごの木になるだろう
美しい収穫をむかえたりんごたちが
私のエプロンに落ちてくるだろう


島さん評

はんなさん「美しく収穫をむかえたりんごがあった」
りんごの産地では、落ちたりんごは商品価値なし扱いだけど、私らが落ちたりんごを見ると、ああもったいないと思ってしまう。そういう気持ちを1つ、ストーリー仕立てにしたものかなと思います。
「私のエプロンに落ちてくる」という図、終行が美しいです。種を植えて木になる(種からだと実際にはとてつもない年月に思えるが)という部分は、ある意味シンプルなものでしたが、このエプロンで受ける1行があるので、光りました。まあ、童話っぽいのでこれでもいいけれど、私なら主人公側の加齢も加えるかな・・・。
2連~3連の、直接かじる、焼きりんごにする、という部分も食欲を誘ってなかなかのものです。6連、拾いあげたりんごを、香りで捉えるところもステキでした。
とびきりのインパクトには欠けます(その意味で、もう少し綿密に書いてもいい)が、全体として、りんごへの執着を切らさずに、最後まで通してくれているので、りんごストーリーとして読めるものです。1つの讃歌ではないでしょうか。秀作を。



2. 「あなたの先へ」
          (2006年11月29日投稿)


あなたの命がほろほろと崩れて
一つずつ欠片が落ちて行っても
たぶん 私は絶望しないと思う

たまたま あなたが先に生まれたから
私より先に行こうとしているだけで
私たちの生きる速度は
生まれた時から違っていた

泣くだけは泣くだろう
愛するだけは愛するだろう
命の欠片が無駄にこぼれてしまわないように
精一杯 手のひらで受けるだろう

ねえ 思うのだけれど
まだ出会ったことのない人々や出来事に
この先どこかで出会うためには
これからも歩き続けなければならないし
笑ったり泣いたり怒ったりしなければならないでしょう?
それはやっぱりひりひりするような
ぎらぎらするようなことなのです

あなたがもうすぐ歩みを止めても
私はその先の
あなたが想像してみたことのない時間の先まで
歩き続けなければならない

でも たぶんそれは
あなたが望んでいることだと思う

夕べ 小さく微笑むあなたを見ていて
ごく自然にそう思えた


島さん評

はんなさん「あなたの先へ」
なんというか、たとえばお母さんのことを介護しているとか、普段そういう面倒をみている距離の近さにいる人だから、思うことですよね。単純に命を惜しむ、エセヒューマニズムでないとこがいいです。後から生まれたものが先に死ぬのは不幸なことだけど、先に生まれたものが先に死ぬのは、そう不幸なことではないのかもしれませんね。ある意味、そう覚悟しておかねば、父・母の介護はやれません。
これは、そういう意味に読みました。父・母を介護している人への、共通の呼びかけでもあるでしょう。ふだん、精一杯やってるのだから、もうそんなに哀しまなくてよいよと、言っているようです。
語りが多くなって、詩的はいま一歩なのだけど、その境地を買って、おまけの秀作を。難しいことを、順を追って語れている、その語り口も評価。

1ヶ所だけ。第5連1行目、「歩き止めても」は、「歩みを止めても」で、いいでしょう。



3. 「コーヒー」
       (2007年1月11日投稿)


ところで私はまたこうして
とりとめもなく さまざまな想いに浸っている
一人の時間をできるだけ引き延ばして
薄く伸びきったところに何が落ちているのか
聴こうとしている

それはビーズのように連なっている一連の言葉だったり
どこからともなく聴こえてくる音楽だったり
遊んでいるように見えるけれども
とても親密な恋人の会話だったり


  ふと、思い出した
  きらきらと陽ざしに輝いている波の面が
  静かに広がっている
  まるで音のない動画を見ているみたいに
  小さなさざ波がちろちろと陽に映える
  シルエットのように浮かびあがった少女の面影が
  海を背景にして立っている
  少女の表情はわからない
  たぶん会ったことのない少女だろう


壁に向かって一人で食事をしている人がいる
今時のファーストフードのレストランは
大抵、どこもそんなふうだ
店内いっぱいの客なのに みんな
壁に向かって一人ぼっちで食事をしている
メールをしている人もいる
メールの向こうで初めて孤独から解放される

私はゆっくりコーヒーをすする
きのうまで広がっていた哀しみが
きょうは小さな鞠になって跳ねている

(久しぶりだね)

ジョキジョキとはさみで切られて痛かったのに
なんだかきょうははさみが見えない

鞠つきはまだできないけれど
少しだけ 鞠を抱えていようか


島さん評

はんなさん「コーヒー」
美しい流れで読み通せる詩です。すばらしい。
それに、第1連4行目、第2連1行目、第3連4~6行目、第4連終行など、各連ごとに見ても美しいフレーズが配置されていて、なおステキです。
第4連の現代的なワンシーンを描いた優れた観察力も、この詩にしっかりとした読み応えの核を与えているし、孤独な中にもラストで好転して終わるのが好感です。
いいですね。秀作を。これはあなたの代表作の1つになるでしょう。
個人詩集を出す時とかは、前から3~5番目くらいに持ってくるといいでしょうね。

このままでも充分に満足してますが、少しだけ述べますと、
まず、第2連の3~4行の対語。
私の感覚から言うと、反対語として、
 遊んでいるように→とても真剣な
 ふざけているように→とても親密な
のどちらか、という感じなんですが、もしあなたの描きたいニュアンスが
 遊んでいるように→とても親密な
で、正確に表しているということなら、このままでもよいですが。

それから前4連の漢字配置の流れで読んでくると、
「私はゆっくり~」以降後ろ4連が、前に比較し、極端に漢字が少なくなっているのがわかるでしょうか?
この点で、ちょっと私は流れがそがれます。
少なくとも「まり」は漢字の「鞠」でいいと思いますよ。
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by hannah5 | 2007-01-21 16:59 | 投稿・同人誌など | Comments(14)

コーヒー   


ところで私はまたこうして
とりとめもなく さまざまな想いに浸っている
一人の時間をできるだけ引き延ばして
薄く伸びきったところに何が落ちているのか
聴こうとしている

それはビーズのように連なっている一連の言葉だったり
どこからともなく聴こえてくる音楽だったり
遊んでいるように見えるけれども
とても親密な恋人の会話だったり


  ふと、思い出した
  きらきらと陽ざしに輝いている波の面が
  静かに広がっている
  まるで音のない動画を見ているみたいに
  小さなさざ波がちろちろと陽に映える
  シルエットのように浮かびあがった少女の面影が
  海を背景にして立っている
  少女の表情はわからない
  たぶん会ったことのない少女だろう


壁に向かって一人で食事をしている人がいる
今時のファーストフードのレストランは
大抵、どこもそんなふうだ
店内いっぱいの客なのに みんな
壁に向かって一人ぼっちで食事をしている
メールをしている人もいる
メールの向こうで初めて孤独から解放される

私はゆっくりコーヒーをすする
きのうまで広がっていた哀しみが
きょうは小さな鞠になって跳ねている

(久しぶりだね)

ジョキジョキとはさみで切られて痛かったのに
なんだかきょうははさみが見えない

鞠つきはまだできないけれど
少しだけ 鞠を抱えていようか


コーヒーが冷めないうちに

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by hannah5 | 2006-12-14 23:39 | 投稿・同人誌など

秀作をいただきました   


自分の作品を投稿して詩人の先生方から評をいただくサイト、「MY DEAR」で詩の勉強をさせていただくようになってから10ヶ月ほど経ちますが、このたび、2作品に秀作をいただきました。2作品ともそれほど自信のあった作品ではありませんでしたが、思いがけず秀作をいただき、ここまで詩を書き続けてきてよかったと思っています。

MY DEARには毎回たくさんの投稿があり、見てくださる先生方も本当に大変だと思います。でも、いつも丁寧に評をくださる先生方のご指導のおかげで、私の詩もなんとか形になってきました。これからも、もっともっと詩を書いていきますので、よろしくお願いします。島さん、三浦さん、伊藤さん、本当にありがとう。


「自由な夜」(10月13日)


柄の取れた眼鏡
度が合ったり合わなかったりするから
新しい眼鏡が作れずにいる

金曜日の夜
眼鏡をかけずに見る街の景色は
優しくて 自由で ペーソスがある

夕方までぎりぎりと絞っていたものが
柔らかいものたちの前で
溶け出している


  そういえば こんな夜
  しどけなく酔いつぶれたり
  長いキスにもたれかかたり
  遠くまで歩いてみたり
  溶けて流れたことがある

  自由は限りなく伸び縮みすると思っていた


小さくたたんでしまっておいた心を
ポケットからそっと取り出し
しわを伸ばす

それから、右や左に振ってみる
かみ合わなかった分を
合わせるように

そのたびにリアルな響きが
ゆるゆると落ちてくる


夜がこぼれていく

心の形に合わせるように



「聴こえる」(10月24日)


奥の方で
静かに
静かに
鳴っている
不思議な音色

いつだったか
聴いたことがある
小さな灯に触れるような
青くかすかな音

けれど
耳を澄ましてみたら
今まで聴いたことがない

(どこかでさわれそうな)

手を伸ばしたら
すっと引っ込んで
ぴたっと止んでしまった

じっとしていると
やがて静かに
すべりだした

小さな音

たくさんの細いぎざぎざ
幽かな直線と直線の茂み
生まれたばかりの明るい空気

私に触れては通りすぎる
魂のほのかなささやきを
じっと
聴く

2作品への評
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by hannah5 | 2006-11-11 23:05 | 投稿・同人誌など | Comments(22)

聴こえる   


奥の方で
静かに
静かに
鳴っている
不思議な音色

いつだったか
聴いたことがある
小さな灯に触れるような
青くかすかな音

けれど
耳を澄ましてみたら
今まで聴いたことがない

(どこかでさわれそうな)

手を伸ばしたら
すっと引っ込んで
ぴたっと止んでしまった

じっとしていると
やがて静かに
すべりだした

小さな音

たくさんの細いぎざぎざ
幽かな直線と直線の茂み
生まれたばかりの明るい空気

私に触れては通りすぎる
魂のほのかなささやきを
じっと
聴く
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by hannah5 | 2006-10-24 22:32 | 投稿・同人誌など

自由な夜   


柄の取れた眼鏡
度が合ったり合わなかったりするから
新しい眼鏡が作れずにいる

金曜日の夜
眼鏡をかけずに見る街の景色は
優しくて 自由で ペーソスがある

夕方までぎりぎりと絞っていたものが
柔らかいものたちの前で
溶け出している


  そういえば こんな夜
  しどけなく酔いつぶれたり
  長いキスにもたれかかったり
  遠くまで歩いてみたり
  溶けて流れたことがある

  自由は限りなく伸び縮みすると思っていた


小さくたたんでしまっておいた心を
ポケットからそっと取り出し
しわを伸ばす

それから、右や左に振ってみる
かみ合わなかった部分を
合わせるように

そのたびにリアルな響きが
ゆるゆると落ちてくる


夜がこぼれていく

心の形に合わせるように

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by hannah5 | 2006-10-13 23:52 | 投稿・同人誌など | Comments(4)