カテゴリ:アメリカ時代(2004-2005)( 47 )   

Thanksgiving Day   


遠くにいた家族が帰ってきた
父の顔を見に
母の顔を見に
兄弟の顔を見に
それからお腹いっぱいのご馳走のために
何を置いても帰ってきた

母が作った七面鳥におもむろにナイフを入れるのは
ぎこちなくエプロンをした父の役目
神妙な手つきで肉にナイフを入れ
儀式のように切り分けていく
やがて山盛りの肉が運ばれ
白いところがいいの?
それとも赤身?
と母が訊く

とうもろこしやかぼちゃやストリングビーンズや
マッシュドポテトやスクォッシュやカセロールが回されて
お皿に次々盛り
父が感謝の祈りをささげて
あたたかな食事が始まった

家族と遠く離れているから寂しいだろうと
感謝祭の日になると
誰かがいつも呼んでくれた
家族と同じようにご馳走を食べ
おしゃべりをし
ゲームをしたり
テレビを観たり
静かに静かに日が過ぎていく

戦争をしたり
侵略したり
軍事力を拡大し
アメリカという国は時として脅威をもたらすけれど
Thanksgiving Day はアメリカ人が心寄せ合って
家族の絆を確認し
優しく穏やかに暮らす日

Thanksgiving Day
一人で暮らしたアメリカで
心がいつもあたたかかった日だ

Thanksgiving Day
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by hannah5 | 2005-11-24 23:55 | アメリカ時代(2004-2005) | Comments(1)

実験を繰り返す   


からだの中から湧いてくる疑問を解くのは
だれ?
深い淵から仰ぎ見て
投げやった振動のその先を
おずおずとたしかめてみる

形骸化されたパターンに向かって
鰯のように泳いでいれば
振動には気づかず 感じず
ましてや触れることもなく

からだの奥深くにあるものが
闇なのか 光なのか
それが知りたかったのだ

青ざめた顔をして歩き廻っていたら
沖の向こうのガリバーが
振動に気づいて
親切にも闇と光を選り分けてくれた

試験管を振るごとに
もうもうと煙があがったから
私は失敗を恐れなくなったし
成功することもわかるようになった

心の実験は順調に進んだよ
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by hannah5 | 2005-08-30 20:11 | アメリカ時代(2004-2005) | Comments(8)

Graudates   


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(左:心理学部 School of Psychology、 右:神学部 School of Theology)


私達は夢を語り合った
いつか学びが完了した時に
その道の先鋭となり
社会の中に確固とした土台を据え
輝かしい未来を自分達の手で切り開いていく夢を
あきることなく語り合った

私達に与えられた時間の大きさと豊かさは
私達の思いを限りなく広め
限りなく深めた

今日は誰もが希望を抱いて未来を見つめている


(6.11.2005)
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by hannah5 | 2005-06-17 10:54 | アメリカ時代(2004-2005) | Comments(8)

ある家族の肖像   


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(レイナとノア)


3年前に来た時はレイナはまだ一人だった
聡明な彼女はいつも穏やかで
道端で会うと立ち止まっては話をした

いつだったか…
レイナはボーイフレンドを紹介してくれた
彼女と同じくらい脊がすらりと伸びた好青年だった

クラスへ行く朝
よく2人が肩を並べて歩いているのを見た
キャンパスに着くと「バイ!」と行ってそれぞれの方角へ散って行った

いつだったか…
レイナからもうじき結婚するのだと聞いた
ユース・グループでマットと出会って5年が経っていた

朝クラスへ行く時
前よりももっと頻繁に2人が並んで歩いているのを見た
何も言わなくても2人は時間を共有していることがよくわかった

いつだったか…
マットとレイナが隣へ引っ越してくることになり
久しぶりねぇとしばらくその後の情報を交換しあった

朝が来ても
もう2人は肩を並べてクラスへ行かなくなった
その代わり、幸せそうに寄り添って暮らしていた

いつだったか…
レイナのお腹が膨らんでいるのがわかった
予定日はいつ?4月なの。レイナは嬉しそうにほほ笑んだ

4月になり
隣は少しだけ静かになり、しばらくレイナが留守にした
レイナがいないアパートで、マットは一人で暮らしていた

いつだったか…
赤ん坊の泣き声が隣のアパートから聞こえた
Welcome Home, Noah! 扉に張り紙がしてあった

ある日
レイナのアパートの前を通りかかったら
新米ママが小さな小さな赤ちゃんを大事そうに抱っこしていた

いつだったか…
レイナがきれいな声で泣き止まないノアに子守唄を歌っていた
静かに優しくノアの顔を見つめながらいつまでも歌っていた

今日
レイナがノアを抱いて会いにきた
いつのまにかノアはシャイな男の子の顔をしていた

お金がない私達は
調味料をもらったりテレビを修理してもらったり
ノミ駆除の日はお互いの部屋へ避難しあったり

小さな家族の小さな幸せは
日本へ帰ってもきっといつまでも忘れない


(9.9.2004作)

ある家族の肖像
小さな友だち - ノアのこと
ノアがねんねしたよ
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by hannah5 | 2005-06-15 20:12 | アメリカ時代(2004-2005) | Comments(11)

ジャカランダが咲くころ   


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海を隔て
何千マイルも離れた異郷の地で
いつしか見慣れていった街の風景や
ほほえみあった人々の顔や
馴染んだ学舎(まなびや)のせわしないカリキュラムが
怒涛のように今日の私に押し寄せる
それは確かに私の生活だったが
故郷で忙しくしている間に
いつの間にか記憶の中からこぼれてしまった

人々はあの日と変わることなく
親切で優しい友人のようだけれど
会わなかった間に少しだけ
大人になったり
シャイになったり
病気がちになったり
それから語ることもなくしてしまったりしていた

ジャカランダがまた満開になった
紫色の甘い香りが歩道に降り積もり
街の中に佇み
ひとしきり人々を酔わせてしまう

私たちは出会い
一時心を溶かし合いながら
また一時別れのしたくをし
惜しみながら遠くに離れ去る

ジャカランダが満開になって
あの時と変わらぬ甘い香りが満ちる頃
人々はそんなふうに親しみ合い
そんなふうに別れて行く


(6.9.2005)
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by hannah5 | 2005-06-15 02:41 | アメリカ時代(2004-2005) | Comments(6)

終わりの日   


終わりの日は静かに訪れた

私達はやるだけやり
闘えるだけ戦い
気力も体力も尽くせるだけ尽くして
闘いは終わった

今日は静かに時を流そう
昨日までの闘いを思うことなく
明日からの暮らしを思い煩うことなく


(6.11.2005)
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by hannah5 | 2005-06-14 10:56 | アメリカ時代(2004-2005) | Comments(16)

オアシスのように   


私が少しだけホームシックになって
少しだけ弱音を吐いた時
主をたたえる歌が
砂漠のオアシスのように
心を満たしてくれた


(6.9.2005)
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by hannah5 | 2005-06-14 10:47 | アメリカ時代(2004-2005) | Comments(2)

レモンの木   


私が住んでいるアパートの隣に
レモンの木のある家があって
毎年、今ごろになるとレモンが
たわわに実ります

ある日、たまたま外に出ていた
その家のあるじのおじいさんと話をしました
彼はその家に40年近く住むメキシコ人です

私が「いいレモンの木ですね。たくさんなってますね」と言うと
レモンの木を指差して
手真似で「いくつかあげるよ」と言うのです
いくつかって言ってもねえ、と思案していると
「レモネード、レモネード」と言って
2、3個もいでくれました

メキシコの人達は
よくもぎたてレモンでレモネードを作るのだそうです

もぎたてのレモンは芳醇な香りを漂わせ
しばらくキッチンにおかれていましたが
そのうち、つわりのひどい友人にもらわれてゆきました

レモンをくれたおじいさんは
しょっちゅう庭に出ては
きれいに植えられた色とりどりの花の世話をしています
芝生もきれいに手入れがしてあって
「きれいな庭ですね」と私が言うと
ちょっと誇らしげな顔になります

レモンの木のそばには
アプリコットの木が植えてあり
こちらも季節がくるとたわわに実りますが
今朝通りかかったら
たくさんの枝が切られていました
たぶんせんていをしたのでしょう
切った枝は暖炉の薪にするのだそうです

カリフォルニアにも春が訪れています
ゆっくりと


2004/03/26 初出
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by hannah5 | 2005-05-11 23:39 | アメリカ時代(2004-2005) | Comments(13)

ありがとう   


いつも優しい言葉をかけ
寂しくしていないかと気にかけ
あたたかい食事を用意し
倒れそうになれば駆け寄って支え
あなたはいつもあたたかく励ましてくれました
あなたのあたたかさを充分感じていたのに
ゆっくりかみしめたり
感謝したりすることができないほど
忙しさに追われ
日々のスケジュールをこなすことに精一杯で
ろくにお礼もできないまま
今日まで時間がたちました
ひとつひとつの親切にお返しをすることはできないけれど
あなたからもらった思いやりと優しさを思うだび
言い知れぬほど心があたたかくなります
もうだめかと絶望した日もありました
けれど 怪我もせず 病気にもならず
こうして元気に暮らしています
今の生活の積み木のいくつかは
あなたが積んでくれたものです
あなたがいたから
歩いてこれた

ありがとう

心から
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by hannah5 | 2005-01-02 15:41 | アメリカ時代(2004-2005) | Comments(2)

一番目のクリスマスカード   


懐かしい名前が送られてきた
東海岸にいた時に通っていた教会
小さかったけれど みんなあたたかくて
日曜日はいつも誰かの家でお昼をごちそうになった

西海岸に移ってもいつも祈り続けてくれた
貧しい教会なのに 毎月決まって送ってくれた35ドルの小切手
どこからも経済的な援助がなくなった時
この35ドルはこの上もなくありがたかった

日曜日は片道40分もかけてロンが迎えに来てくれた
帰りはまた40分の道をロンが送ってくれた
ワンダが作ってくれる料理はあったかい心がこもっていて
私達はほんのりあたたまって帰宅した

遠い日本に帰ってしまっても
誰よりも真っ先に送ってくれたクリスマスカード
今も祈り続けてくれている心が添えてあった
「主にお仕えするあなたを 主が祝福し続けてくださいますように」
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by hannah5 | 2004-12-13 13:10 | アメリカ時代(2004-2005) | Comments(4)