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私の好きな詩・言葉(46) 「動物の受難」 (岩田 宏)   


あおぞらのふかいところに
きらきらひかるヒコーキ一機
するとサイレンがウウウウウウ
人はあわててけものをころす
けものにころされないうちに
なさけぶかく用心ふかく

ちょうど十八年前のはなし

熊がおやつをたべて死ぬ
おやつのなかには硝酸ストリキニーネ
満腹して死ぬ

  さよなら よごれた水と藁束
  たべて 甘えて とじこめられて
  それがわたしのくらしだった

ライオンが朝ごはんで死ぬ
朝ごはんには硝酸ストリキニーネ
満腹して死ぬ

  さよなら よごれた水と藁束
  たべて 甘えて とじこめられて
  それがわたしのくらしだった

象はなんにもたべなかった
三十日 四十日
はらぺこで死ぬ

  さよなら よごれた水と藁束・・・・・

虎は晩めしをたべて死ぬ
晩めしにも硝酸ストリキニーネ
満腹して死ぬ

  さよなら よごれた水と・・・・・

ニシキヘビはお夜食で死ぬ
お夜食には硝酸ストリキニーネ
まんぷくして死ぬ

  さよなら よごれた・・・・・

ちょうど十八年前のはなし

なさけぶかく用心ぶかく
けものにころされないうちに
人はあわててけものをころす
するとサイレンがウウウウウウ
きらきらひかるヒコーキ一機
あおぞらのふかいところに。



(岩田宏第三詩集『頭脳の戦争』(1962)所収、大岡信編『現代詩の鑑賞101』より)

解説
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by hannah5 | 2005-07-31 20:28 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(9)

やるせなく 懐かしく 眠りにつく   


昼間の空気が残る
マンションの廊下

そのそばを
疲れた熱を乗せて電車が走る
ゴートン ゴートン
ゴートン ゴートン

暗い木々の中で
ふと思い出した蝉が
じじじ
じじじ

祭り帰りの親子たちが
余韻に漂いながら
そぞろ歩いてくる

こっちからも
サンダルを引きずりながら
笑いながら

遊び足りなかった男の子たちが
自転車に乗って
右や左に折れていく

ランドクルーザーが
たて続けに2台
走り去った

息を切らしながら
坂道を自転車でこいで登る
おじさんが一人

それから
急に
空気が途切れてしまった

昼間の熱が
漂白したまま
夜は境目に下りていく
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by hannah5 | 2005-07-30 23:03 | 作品(2004-2008) | Comments(6)

ここ   


ひとはこの地上のあらゆる不思議をかなしんだり
フジョウリとよんでみたり
素敵なものだとほめてみたり
ゼツボウしたり
征服できる広さだと誇ってみたり
実に人間の気分次第で
粘土のように変わってしまう

地上でどんぱちやる戦争は
地表をかすかにかすったくらいのものだそうだ
地球の内部はいたって鈍感
遠すぎて届かないらしい

宇宙に飛んで行ったDiscoveryは
宇宙の中の整然と並んだ星々に挨拶をかわしながら
地球が蒼いことを再確認するのだろうね

ひとが苦しんだり
叫んだり
わめいたりしているうちに
地球は宇宙の中で蒼い球体を保ちながら
内部で鈍感な平安を享受している

地球はドンちゃん騒ぎをするほど愉快な場所ではないが
自殺するほど悲惨な場所でもない

案外、生きていけるとこだよ、ここは
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by hannah5 | 2005-07-29 20:37 | 作品(2004-2008) | Comments(18)

夏のまん中で   


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                     風が吹き過ぎる
                     穂と穂のあいだ

                     そよそよと
                     知らん顔して

                        一日 汗だくになって
                        仕事をしていた

                     穂と穂の中を
                     すいすいと通り抜けた

                     風は
                     夏のまん中で

                        デジタルのように 頭が
                        カチコ カチコ カチコ

                     すらりと穂をつけたまま
                     一斉になびく

                     ふんふん
                     という 穂の返事

                        夜になって 仕事は
                        やっと終わった

                     さわやかな
                     風が飲みたくて

                     きみたちのあいだに
                     いる


黄金色
写真: difamyさん
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by hannah5 | 2005-07-29 00:38 | 作品(2004-2008) | Comments(14)

Side by Side   


追いかけまわさなくても
そばに並んでくれるようになった
かな。。。

いつのまにか 私の横に来て
いつのまにか 静かに立ち去る

それは私の気持ちの外側にあるのもなく
気持ちを超えるものでもない

それで ようやく
落ち着いて書いていく

安らかな感覚が横たわっているから
今夜も戻ってきたよ
ここに
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by hannah5 | 2005-07-28 22:01 | 作品(2004-2008) | Comments(6)

犬と人と   


あなたが優しく見つめているから
すっかり安心して

すやすや

眠る

あなたの思いやりと
まあるく広がる空間の中で
生きているのは夢

犬小屋の入り口をかじってみるのは
夢のつづき

その向こうにあなたが立つ
笑っているような泣いているような
顔をして

あなたの優しさなんか試さない

生きたいように生きていると
草のにおいが鎖を引っぱって
早く早くとせかすから
走り出す 足が四つ
ひとつになって

困惑顔のあなたを置いていくね

見るものは草原(くさはら)の広さと
ひとしきりの空いろと

わたしは自由だったか
あなたは自由だったか

いつのまにかあなたのそばで
眠っているわたしの中の
あなたは

ひとしきり

自由になった

It goes on..

※優しいkskskさんとナナに
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by hannah5 | 2005-07-27 19:40 | 作品(2004-2008) | Comments(12)

伝言版 5   



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いつもたくさんのコメント、伝言、本当にありがとうございます。

新しい伝言版を作りましたので

コメント以外の伝言はこちらに書いてください。


                                        はんな
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by hannah5 | 2005-07-26 23:55 | 伝言どうぞ♪ | Comments(60)

方向性   


熱が
要るのです モノを
作り出すということは

奥深い
言葉たちが きれいに
並べられています

私には 到底
できない
とんぼ返りの美しさです

切り口が 鋭く
ありました
切れ味はいいようです

愛する が
意味深い言葉たちを
さらに 深くしました

言葉は 静かに
走り出しました
目ざす所に向かって

愛する は
何より広く
何より大きく

何より深く
あなたのすべてを
集約していました

才能ある あなたの
言葉たちが
今日は おいしいです
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by hannah5 | 2005-07-26 19:48 | 作品(2004-2008) | Comments(4)

詩を書いている   


いつか
眠ることがあるのだろうね
睡眠がしづかに降りてきて
ながい眠りにつくことがあるのだろうね

いまは
眠らないよ このまま
気分は冴え冴えとしている

ずっと
生まれてからこのかた 眠っていたから

しばらく
このまま起きていようと思う
人生というヤツが駆け抜けてしまわないうちに
小脇に抱えたまま
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by hannah5 | 2005-07-25 19:55 | 作品(2004-2008) | Comments(4)

連帯感   


右にはメールを打ち込む女がいて
左には不協和音で携帯に話しかける男がいる
まん中で人生の端くれを読んでいる私がいる

無愛想で
無関心で
無感動で
一心に目的地目ざして歩く人の波が
右から来て
左からも来て
流れて通る

ばらばらな心たちは
この流れの中でばらばらになったまま
安心して 寄り添わない

寄り添うなんてルール違反だから

奇妙な孤独の連帯感が
今また私のそばから立ち去った

さようなら は 都会のあいさつ
こんにちは より あたたかい
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by hannah5 | 2005-07-25 19:48 | 作品(2004-2008) | Comments(6)