<   2006年 08月 ( 21 )   > この月の画像一覧   

蔦がにょろにょろ生えてくる   


私の中から
蔦がにょろにょろ生えてくる

未来を思う小さな種を
ひと粒まいたから

未来を思うと
腹の中が熱くなる

その熱が栄養になって
種が芽を出した

蔦は腹をかけあがり
どっくどっくの心臓を破り
口の外へ出ていく 出ていく

蔦はまだまだ伸びていく
空に向かって
空の向こうの空に向かって

まるで子どもが親におねだりするように
精一杯体を伸ばして
思いっきり手を伸ばして

新しいものが発信される
未来に向かって
蔦がにょろにょろ伸びていく
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by hannah5 | 2006-08-30 23:46 | 作品(2004-2008) | Comments(2)

今日の人に   


傷つきやすい君の心を
ひしと抱えて
大丈夫だよ!
と笑ってみせたけれど
本当は私だって
二十三のころは自信なんてひとつもなかった

どこをどう通ってきたのか
今はほとんど思い出せなくなってしまったけれど
あのころ一人で悦に入ったり
とめどもなく自信がなかったり

揺れてたね
誰もいなくなった夕方の公園で
一人揺れてるブランコみたいに

文学かぶれの私には
孤独になることがかなりかっこよく見えた
それで一人になって悲愴な顔をして
孤独ぶってみたけれど
本当に孤独になったら
悲しくてやりきれなかったよ

本当はもっと上手に生きられたんじゃないかと思う

君の心が落ちてしまわないように
抱えてるよ
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by hannah5 | 2006-08-29 23:35 | 作品(2004-2008) | Comments(8)

閑話休題   


中国で英語と日本語を教えている友人からパンダの写真が届きました。
さっき着いたばかりの写真を大公開します。

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             生まれて間もないベビーパンダを脱脂綿できれいに        
  
                                               (於成都)
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by hannah5 | 2006-08-29 00:50 | 作品(2004-2008) | Comments(20)

未来へのモニュメント   


ちりちりしていた夏が
あっという間に行ってしまった
秋がゆっくりと近づいている
今日は空気が優しい

ふと、モニュメントについて思いを巡らした

人間は生きている間に創ったものを
何かしら形に残しておきたいと思うものらしい

思いをこめて作ったものをモニュメントにしておく
モニュメントは本人が死んだあとも空中を漂っている
いつか誰かに拾われるのだろうけれど

私が死んだあと
自分のモニュメントがいつまでもなくならずに
あちこちに浮遊しているのは妙な気分だ

家族や友人のみならず
私の知らない人もそのモニュメントを見るだろう
そして、モニュメントは私の代わりに
いろいろしゃべり始めるだろう

私は今のうちに
なんとかモニュメントが後世に残るように
形を整えようとする
触手を伸ばして
見たことのない未来を拘束しようとするにちがいない

そんな自分はなんだか浅ましい気がする

未来には未来の形がある
私が想像もしなかった発展や開発や暮らしがある
私はそれらを信じていたい

だから、私はモニュメントは残さないだろう
代わりに、未来に生きていく人々に
思いを託しておこうと思う

未来の人々が
その先の未来を見つめていけるように
今ここから
未来への思いを預けておきたい

お詫び
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by hannah5 | 2006-08-28 23:20 | 作品(2004-2008) | Comments(10)

私の好きな詩・言葉(82) 「入眠」 (谷川 俊太郎)   


遠くで鴉が鳴いている
かなりしつこく鳴いている
こんな夜中に何用か
どこかで洗濯機が唸っていて
天上から得体の知れぬパチパチいう音

家の外には黒い空間がひろがっている
いのちに満たされているはずなのに
それがVOIDという英語を思い出させる

(シカバネノカミガノビルツメガノビル)

いつから世界はこんな組み立てになったのだろう
眠れぬままに聞く夜中の音が心の中で
不条理な音楽になる

   *

言いたいことはないのに
起き出して紙に語を並べるのは
言葉を石ころのように転がしておきたいから

氾濫する意味は暴力の前に無力だ
涙もそして
沈黙ももちろん

(タイジニカミガハエルツメガハエル)

だが言葉にひそむ静けさは
ときに笑いに
ときに無意味に
ときに歌に変装して
人をこの世の縁(へり)にいざなう・・・

   *

深いオーガズムの記憶に蘇る世界が
この現実とは別次元に存在する
マグマのように

その坩堝の中で夢うつつに
人種と宗教と制度と思想と幻想と
そんな何もかもをごった煮にして待つ
ひそかな産声を

(初稿 「現代詩手帖(2005)1」)

ひと言
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by hannah5 | 2006-08-27 02:19 | 私の好きな詩・言葉 | Comments(4)

男と猫   


その猫は
夜になると表に出て
誰を待つともなく待っていた
きちんと前足を揃えて
眼を小さく細めて
飼い主に見捨てられてしまった
というふうに
どこか寂しげだった

何度かそこを通るうちに
猫は私の顔を覚えてすり寄ってくるようになった
なでてやると
小さな体の奥から
ごろごろという音が響いてきた
くるりくるりと身をかわす猫の背中に
掌のくぼみを当てて這わせてみた
まだ若い美しい雌猫だった
適当な名前が思いつかなかったので
ネコと呼ぶことにした

ネコは私がそこを通るたびに
まるで長年探し回って
やっと見つけたというように
懐かしそうに跳んできた
― やっと会えたのだから
― しばらくどこへも行かないで

私の行く手を阻むように
ネコは私の足元にからみついた

― 君を連れていきたいけれど、できないの
― せめて今だけの時間を楽しませてね
ネコは飢えた眼をして
ぴったりと私のそばから離れなかった

時折りソーセージを持っていくと
ネコは何日も食べていなかったかのように
ソーセージにガツガツとかぶりついた

ネコはそれから何ヶ月も現われなかった
大方誰かに拾われたか
飢え死にしてしまったかと思っていた頃
いつもの場所から少し先へ行った所で
ネコによく似た猫が
誰かにかわいがってもらっているのに出くわした

「みーちゃんと呼んでるの」
その女性はそう言って
嬉しそうに猫を見つめた

「捨て猫じゃないわよ
だって、きれいでしょう?」

猫は近くの家で飼われていて
十ほど違う名前がついているのだと
女性は教えてくれた
そばを通りかかった人がみんな
自分だけの猫だと思ってつけた名前だった

ネコは心なしか他人行儀だった
「ネコ、おいで」

ネコはつぃーっとあっちへ行ってしまった

            **

私はふと
何年か前に私を振った男を思い出した

「君が好きでたまらない」
そう言われて、どきんとしたから
その男とつき合うようになった

思いつめるほど好きではなかったが
男の話は面白かったし
何よりも教養もお金もある男の傍にいるのが楽しかった

それからしばらくして
男からの連絡が途絶えた
きっと仕事で忙しいのだろうと思っていた

ある日
ふと立ち寄ったレストランに
男とよく似た男が
私の知らない女と食事をしていた
私に向ける優しいまなざしを
その女にも向けていた

女とのつき合いはその女だけではないことが
あとでわかった

ふすまの陰に隠れて立つ男の襟元を
つかんで殴ったことがあった

ほどなく、男とは終わりになった

            **

よく、女が猫と比較されるけれど
男は猫に通ずると
私は思っている
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by hannah5 | 2006-08-25 11:41 | 作品(2004-2008) | Comments(16)

模写をする   


こういうふうに詩を作ると正しい
とは誰も言わないけれど
私は好きな詩人の詩の中に
私自身を投げ入れてみる

私とはおよそ似ても似つかぬ感覚が
不思議な言葉たちに伴われて
そこに置かれている

私は吸い取り紙になって
その言葉が染みてくるのに身を任せてみる

言葉はまるでそれが一番正しいというように
私の中で広がっていく

私はそこで
のらりくらりと時間をすごす

一杯のコーヒーが飲み干されるころ
私とは似ても似つかぬ感覚が
印象となって私の中に残っている

しばらくの間
その借り物を着て暮らすことにする
それが私に一番似合っているという顔をして
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by hannah5 | 2006-08-24 22:22 | 作品(2004-2008) | Comments(4)

出会いの形   


匂いも形も違う self をもつ私たちは
気持ちがまっすぐにつながっていないのに
話していると
ほら穴を探検する感じがある

くしゃみが出そうでむずむずするから
くしゃみが出やすいように
口をあけて待っていたら
ほら穴の奥から
くしゃみが聴こえた

誰がしたの くしゃみ?

むずむずしながら
ほら穴を進んでいく

共通点が少ないからいいのかもしれない
あんまり似ていると
寄り道ばかりしてしまうからね

妙に気になるほら穴の奥
あの奥にきっと何かある

思っている

不器用な直感
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by hannah5 | 2006-08-23 19:05 | 作品(2004-2008) | Comments(4)

鬼さん こちら   


女の小言が延々と続く

壁色した顔の真ん中に
ビー玉のような眼が二つ
その上にあるのは
折れ曲がったマッチ棒のような眉毛

言葉が突き刺すように降ってくる
男は少しばかり抵抗を試みて
あとは黙ってしまった
新聞に目を落としたまま
動かない

女は携帯の画面を見つめたまま
動かない
時おり
思い出したように小言を降らす

パンパラ パンパラ
パラパラ パラパラ
パンパン パパンパン!

石ころのような小言が降り積もった

男は小さく固まった
枯れ木のような抵抗を試みる
「そんなにいやなら 出ていけよ!」

銃撃戦が苦しくなった
やがて男は白旗を翻して退散
パンパラが降らない所へ

女は携帯の相手に
メールを飛ばす
何事もなかったかのように
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by hannah5 | 2006-08-22 21:41 | 作品(2004-2008) | Comments(5)

花火   


少女から女になりたての
やわらかな身体が
赤や紺の花のような浴衣に包まれて
浮き立つように歩いていく

今夜は花火だから

白い素足が
足早に通り過ぎる

生きていることは胸の鼓動にも似て
身体の奥からあふれ出て
息づいている

生命が恥らうように匂いたち
街の空気に溶けていく

細い肩の向こうに
抑えきれない思いが待っている

真夏の疲れが陰をひそめ始めた
夕方

これからはじまる
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by hannah5 | 2006-08-20 22:54 | 作品(2004-2008) | Comments(12)